捧
□暖
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あ、と思った時にはすでに遅く。
バランスを崩して勢いよく前のめりになっていた。
幸い、自分には特殊能力が生まれながらに備わっているので、無様な転び方をせずに済んだ。
砂が体を覆うように発動しており、それに手をついて足元を見やる。
地面からポツリ、と小石が顔を出していた。
憎たらしくなって、蹴り上げてやろうと足を動かしたところ、ズキリ、と。
鈍い痛みが足首から脳髄にかけてはしった。
どうやら俺は、小石ごときで足を挫いてしまったらしい。
眉間に皺を寄せ、うずくまる。
躓いた小石の回りをヤケクソでほじくり始める。
遠くへ放り投げてやろうかと思ったのだ。
我ながら幼稚な考えにあきれながらもほじくり続けるが、小石は小石ではなく、地面に埋まっていた岩だったらしい。
どんどんデカくなっていくそれに、くそ、と悪態をついて足首をさする。
歩けない訳ではない。
が、ヘタに動かせば酷くなるのでどうしたもんかとうずくまったまま考えていたら、いつの間にか目の前に黒く大きな背中があった。
壁、の上についていた柔らかな二つのとんがりが、こちらへ向く。
乗れよ、と背中の主は言った。