拍手感謝デース!!

※夢主デフォ名



誰もいない、屋上で1人寝転がる。


時間は、昼休み。
教室は一時の休息で賑わっている。

オレもその賑わいに入りたいのは山々……だが、本日はその空間が苦痛となる。


ぐうう、と腹が意地汚く鳴る。


「腹……減ったなぁ〜…」


オレは自他共に認める貧乏だ。

朝から新聞配りをこなすが、大体は親父の酒代で泡となる。
最低限の生活費を払うのがやっとで、後回しにされるのが切り詰められる食費。

今日も朝から何も食って無い。腹が鳴るのも当たり前。

だがパン1つ買う金も無い。

いつもなら本田にお恵みを貰うのだが…

残念ながら今日は美化委員(クジで当てやがった)の仕事とやらで、ヤツは校内を掃除して回っている。
美化委員じゃなくて、もはやお掃除委員会で良いような気もする。


ぐうう、と再び空腹を訴える……オレの腹。


「あ〜あ…神様でも誰でもいいからメシくれねぇかなぁ……」



バタンッ



「(うおっ…!?)」

反射的に、ドアとは反対方向に身を隠す。

屋上は立ち入り禁止なハズ…ここに来るのは大抵不良の輩あたりだ。



「……………ふぅ、」

その声は、明らかに男では無い。

ゆっくりと様子を伺うと、そこにいたのは同じクラスの立花葵だ。

ちょこんと座り込み、自身の横に小さなお弁当を置いて……手帳に何か書いている。


「(………変わったヤツ…)」

それが、オレの第一印象。
クラス内での不登校生の1人だった。

顔立ちが整っていて、人形みたいに細くて白い。美人ってやつ。
なのに友人1人もいなく、ただ机に向って休み時間問わず勉強をしている。

言葉遣いもそこら辺の女子とは違って、誰にでも敬語。態度行動共に上品で厳格。
実は金持ちのお嬢様ではないかって噂もある。

金持ちは………苦手だ。



ぐるるるる…



盛大に、腹が鳴った。

もちろん、そこにいたお嬢様にも聞こえたらしい。

「…誰か……いるのですか…?」

目をぱちくりとさせて…話しかける。

「………よぉ…」

仕方ないので、姿を現す。
お嬢様はオレを見るなり、いつもの無表情に戻った。

「……お邪魔…でしょうか」

「別に。オレの屋上じゃねぇし」

ドカッと無理矢理お嬢様の横に座る。

「屋上って立ち入り禁止だぞ」

「………そう…でしたか」

「知らなかったのか?」

「…はい。今知りました」

そして、何事もなかったかのように再びペンを走らせる。

「お嬢様は勤勉だなぁ」

腹が減ってるせいか、機嫌が悪い。
彼女は別に何もしてないのに、オレは嫌味を言ってしまった。

「………お嬢…様?」

「皆お前の事そう思ってるぜ」

「ご…誤解です。私はごく普通の庶民……いえ、それよりも下…ですかね」

意味深な事を呟く。
少し遠くを見据えた後、再び目を手帳に向けた。

「あの……失礼ですが、お名前は…?」

「はぁ?オレの事知らねえのか?」

「すみません…名前と顔が一致しなくて……クラスメイトである事は存じています」

「……城之内だよ、立花葵」

「了承しました。もう、忘れません」


………やっぱり、変わったヤツ。

しばらく沈黙が続くと、あぁそうだと立花が声を上げる。

「よろしければ…お弁当、貰って下さい」

「マジかよ!?……って、何でオレなんかに渡すんだよ」

「お腹…減っていらした様なので。私はいりません」

「おいおいおい…せっかく親が作ったメシなんだからお前が食えよ」

明らかに……見た目からして食を欲している姿をしてるのは立花の方だ。
しかも、これではオレがお弁当を奪ったみたいな図。

「ご安心を。それを作ったのは私です」

「へー……って、マジでいいのかよ?」

「マジで、良いですよ」

「悪いな!いっただっきまーす!!」

小さな弁当箱を開けて、ガツガツと食らいつく。
空腹だったせいもあるが、かなりの美味だ。

「うめぇ!立花、お前料理上手いんだな!!」

「………そんなもの…最低限です……」

少し口元に笑みが浮かび上がる。

「(あ、笑った…)」

ふんわりとした、柔らかな微笑み。
いつも無表情なので、それは初めてみた彼女の意思だったのかもしれない。


プルルルル…プルルルル……


「すみません…失礼」

立花のポケットから、急に電話の音が鳴る。
携帯電話は校内に持ち込み禁止だったハズだが……どうやらそこら辺の規則を知ってはいない様だ。

「(どっかかしら抜けてるんだなー……コイツ)」

ぼんやりとそう思いながら、立花の後ろ姿を見る。





「はい、畏まりました。直ちに戻ります…………瀬人様」


「………は?」

せと、さま?

立花は電話を切り、急いで身仕度をし始める。

「城之内君…すみません。所用で帰ります」

「え……あ、オイ!弁当どうするんだよ!?」

「そちらは…差し上げます。不要ならば処分して下さっても結構です」

「ちょっと待てよ…!」


つい、腕を掴む。
彼女もオレも、きょとんとした。

「あの………何か…?」

「え?えーと………あ、そうそう!さっき電話してたヤツ誰かなぁー…って」

適当な疑問を投げ掛けると、立花は少し困った顔になる。

「……あれ、オレ何かマズい事言ったか…?」

オレがあたふたしていると、急に彼女は我慢仕切れなかった様に笑いを零していた。

「ふ……ふふふふふ…」

「な……何がおかしいんだよ…!」

「いえ…申し訳ございません……何だか懐かしくて」

「懐しい…?」

「城之内君は……私の兄に、そっくりです」

さっきの笑みとは違う、表情。
嬉しそうな…そんな、顔。

「今日…貴方に出会えて良かった」

「そ…そんな大袈裟な……」

「では、私はこれで………あと、先程の質問の答えですが…」







「電話の相手は……私の大切な方からですよ」


そう言って、彼女は静寂に溶ける様に屋上から消えてしまった。


「………ホント変わってるなぁ…」


これはお互いに忘れてしまっている……小さな始まりの物語。



+++++++

まさかの城之内君です。

入学して間もない頃…という設定なので、まだ遊戯とも出会ってない不良城之内の話

お掃除委員本田は東映から拝借しました←


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よかったらどうぞ。



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