シアワセノウタ

□マナブコト
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「―危ないっ!」

遠くから誰かの声が聞こえる。
その声が聞こえた瞬間、魔物の蔓が炎に包まれた。

振り向くとこちらに走って来る、一人の少女がいた。
夜のような黒い髪と瞳を持ち、黒い片刃の見慣れない剣を右手に持つ、大人びた雰囲気の少女。
良く見ると黒い制服―シルリアの制服を着ていた。

セアは人がいた事に少し安心した。しかし、まだ危険な状況なのは変わらない。

「直ぐに逃げなさい!」

「で、でも…」

逃げろ、と言われても、蔓は足に絡まったまま。逃げる事は出来ない。

少女もそれに気付いたのだろう。
立ち止まると札を出す。それは少女の手から離れ、凄い勢いで魔物に向かっていった。

「―――!!」

魔物の音に出来ない声が響き、蔓が一斉に札を―少女を襲う。

「いや…!」

「…解き放て、火の力よ」

セアは少女が怪我するところを見たくなく、目をつぶる。

それでも、この状況でも少女は慌てず、静かな声で何かを呟いた。

「火炎!!」

少女の投げた札が蔓に貫かれようとした瞬間、札が赤く光り、襲いかかった蔓全てを燃やした。

「―!?」

「刹那!」

魔物は戸惑ったのか、新たな蔓で攻撃せず、蔓は宙を漂う。

それが隙を生んだ。

少女は魔物に接近し、剣で斬る。その一連の動き、全てが一瞬の出来事だった。

魔物は霧になって、最初からそこにいなかったように消えた。

「すごい…!」

セアは思わず、感激の声を漏らす。

少女は綺麗で強くて、自分やニア、クラスの他の人達とは違う雰囲気をまとっていた。

「貴方、大丈夫?」

「は、はい!大丈夫です!!助けてくれてありがとうございます!!」

セアは立ち上がると慌ててお礼を言った。
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