□遠まわしの優しさ
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―――遠まわしの優しさ






『キャプテン!!
あと少しで次の島につくんですかー!!?』


キャプテンの部屋にノックも無しに入り
私が笑顔で尋ねれば

我らがキャプテン
トラファルガー・ローは

大きなため息をついて
お得意の無愛想な表情で私を睨んだ


「騒がしい」


『今日!次の島に行けるって思えたら
嬉しくて!!』


「…お前は降ろさねェって言ってるだろ」


目線を外したキャプテンの前に立てば
めんどくさそうに私を見る


『降ります!!
ベポと買い物行くんです!!』


「降ろさねェ」



『イヤですー!!』


私がキャプテンの部屋から出ようと
歩き出せば、腕を強く掴まれた


「バラされてェか?」


『…!!』


無表情のまま、そう言われれば
何も言えなくなる


『何で…ダメなんですか』


涙が浮かぶ
前の島も、その前の島も
私はキャプテンと船番だった。

そのたびにベポやキャスケット達が
お土産を買って来てくれるんだけど
やっぱり、私もみんなと買い物したいもん



「お前が強かったら
いくらでも出してやるよ」


ニヤリと笑うキャプテンに
刃向かう程の余裕は、もう無かった


『もー…っ、…いいっ!!
キャプテンなんかに…私の……!!
私の気持ちなんか…わかんないんだ!!』


キャプテンの顔も見ずに
部屋を飛び出した



『ばかばかばか…!!
…キャプテンの…ばかッ!!』


涙が止まらない
私だって、みんなと買い物したいのに



「島に着いたぞー!!
船を降りる準備を始めよう」


部屋の外からは
キャスケットの声が聞こえてきた



『いいな…みんな…。』


呟いていると部屋のドアが開かれた


「「じゃあ!行ってくるな!!」」


いつもの様に
キャスケット達が顔を見せてくれた


『…うん!行ってらっしゃい!!』


私は部屋の外に出て
船を降りるクルー達に手を振った


今日も
船を降りれなかった



トボトボ…と部屋へ戻っていれば
キャプテンが自分の部屋から出てきて
私をじっと見つめてきた


『何ですか…?』


まだ怒りは治まってないんだから!!

私が目線を逸らせば
キャプテンのため息が聞こえた


「来い」

『…は?』


「急げ」


『??』


キャプテンはそう言うと
船の展望室へ登って行った

私は慌ててその後を追った





「見ろ」


言われて息を呑んだ


『…そんな』


目線の先には
島の中でキャスケット達が戦ってる姿


私の想像していた光景とは違っていた






そう言えばお土産を持ってくるたび
服がボロボロになってた

ハシャぎすぎた

…なんて言ってたけど
今まで、みんな戦ってたの?

これが、海賊…?









「…悪ィ」


『え?』


キャプテンはまっすぐに私を見つめると
腕を掴んで引き寄せた


「…やっぱり

お前が強くなっても
船からは降ろせねェ」


『…キャプテン…』


「だから…これ(船番)で我慢しろ」


『…う……アイアイっ!!』


キャプテンの気持ちが
キャスケット達の気持ちが嬉しくて

私はこんなに大切にしてもらってたんだ



『ありがとう…キャプテン』


「…何がだ」



キャプテンの顔は見えないけど
私の腕を掴むその手が優しくて
涙が出そうだった




遠まわしの優しさ




(それは
本当に気付けない程の優しさだったの)



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