両刃剃刀

□X線/ビニール傘
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『X線』



目覚めると僕はまた
溺れてなどいなかった
見慣れた天井が午前6時
息を切らして情けない

捕まえたと思いきや
逃げる自分の服の裾
怯えているんだ午前6時
日が昇るころに眠る

いつかたどり着くのは
レントゲンの白い影
2時間後に鳴り出す筈の
アラームをOFFにして
裁判に向かう僕等

高速道路
走り去るビル群の
隙間を縫っていく
「非常電話SOS」
そればかりを目で追った


教えて下さい
僕が何を
教えて下さい
君が何を
教えて下さい
何が僕等を


「人と同じは嫌なの」と
身につけているのは
全て既製品
「人と同じ事はしたくない」
正直に言うよ
「人と同じ事さえ出来ない」

あの赤い十字が
僕等のゴール
モルヒネに
悲しみさえ麻痺して
最期の日の空くらい
晴天であれ

いつかたどり着くのは
レントゲンの白い影
2時間後に鳴り出す筈の
アラームを切って
裁判に向かう僕等


教えて下さい
僕に何が
教えて下さい
君に何が
教えて下さい
僕等には何も


酸素を吐き出せない
どうあがいても
植物人間にさえなれない
白衣の天使が
噂話をしている


教えて下さい
僕には何も


いつかたどり着くのは
レントゲンの白い影
怯えているんだ午前6時
日が昇るころに眠る



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