うえきの法則

□君が傍に。
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それは8月の或る日。
突然に。唐突に。
彼と僕の身に大変な事が行った。

「…なんでやろうなぁー、ホンマ」

この熱い中、長袖を着、家の中でシルクハットを被ったままの彼が言う。

「何でそんなに落ち着いてるんですか佐野君っっ!!」

それに対し自分は浴衣にはちまき。着慣れていないせいか、やけにスースーして不安に思う。

「ワンコが慌てすぎやねん。少し落ち着きぃな」

「落ち着ける訳無いでしょう!!てゆーか、これが慌てずにいられますかっっ!!」

一呼吸置いて続ける。

「僕たち、」

「入れ変わっちゃったんですよ?!」

ばん、と机を両手で叩く僕の姿を見ても彼は、

「ん〜、まぁそうやなぁ。とりあえず」

と、ぽりぽりと頭を掻きながら答える。

「とりあえずとかじゃ無いでしょうが!!何笑ってるんですか!もう!」

「だっておもろいんやもん。俺が慌ててるみたいで」

「当たり前ですよ。体は佐野君なんですから」

「声とかもや。俺ってそんな声しとるんやな。なんか変な感じやー」

彼はけらけらと楽しそうに笑う。
僕の姿で。僕の声で。

「まぁそれはそうでしょうね。声と言うモノはそもそも喉の声帯と耳の鼓膜が…」

「やめんかい。難しい事はどーでもええねん」

「てゆーか僕が大阪弁話してる方がおかしいですよ…。はぁ、これからどうしましょう…」

「大阪弁バカにしたら許さへんで!つーか植木んトコのオッサンに相談してみたらええやん。天界人同士で」
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