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□烏兔怱怱
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じゃあ、僕は週3回、ライトさんの家に行きます
そんなにか?
だって、セラさんは今まで見たいに来られないだろうし。その分、僕が夕飯作ります。ライトさん、仕事終わってからじゃ食事を疎かにしてしまうだろうし。
…いいのか?学校は…
学校終われば、僕は自由です。
遠慮しないで下さい。約束したでしょう?
遠慮しない・隠し事をしない・子供扱いしないって
すまない。
ライトさん、こういう時は“ありがとう”ですよ
そうだったな。ありがとうホープ
前の住まいを引き払い、新しい部屋を決めた日に、ホープと交わした約束
まだ、間に合うだろうか。ライトニングは走り出した
エレベーターを降りて、外へ飛び出す
ホープが去ったであろう道に視線を向ける
遠くに、ホープの背中が見えた
「ホープ!!」
一声目でホープの足が止まる
ライトニング少しホッとして、足を速める
でも、まだ振り向いてはくれない
「ホープ!待ってくれ…さっきはすまなかった」
ホープの腕を取り、こちらへ向かせる
「私は、約束を破った…本当に、すまない」
「……僕の方こそ、すみませんでした」
「お前は何も悪くない…」
「隠し事しないって言ったのに…黙ってて」
「いや…」
「でも、隠していたのを怒ってくれたってことは、僕の事…心配してくれたんですよね?」
7歳も年下に、ここまで心を見透かされているなんて
ライトニングは決心したように口を開く
「ああ、そうさ…。心配した。何故私に相談無しに進路を決めてしまったのか…そっちの方がショックだった。なんでも話してくれていると思って、勝手に……私は信頼されているのだと思っていた。なのに、お前は………お前も………。私の元を離れて行ってしまう。でも、それを止めるのは私のエゴだ…子供なのは私の方だ…」
「ライト…さん」
「お前の事になると…冷静な判断ができ…ない」
最後まで言い切る頃には息が上がっていた
泣きたくなる気持ちを抑えて、声が詰まりそうになる
「ごめんなさい、ライトさん…。離れるなんて…そんな事あり得ないです…」
それが心理的距離を示すことでは無いと、ホープは一刻も早く伝えたいと思った
ホープの腕が伸びて、あっという間に抱きしめられた
「反対されるって、分かってたから。言えないでいました……。でも、僕は、ライトさんを…い、一生軍人で居させたくないんです」
「ホープ?」
「女性に危ない仕事はさせられません!!」
「それとホープの進路と、何が…」
「だ、黙って聞いて下さい!!……今はまだ言えませんけど…内定が決まったら、その……」
「あぁ、お祝いをしよう」
「ライトさん…」
少し呆れた様な声をあげるホープ
「ライトさん、笑ってください。一緒に帰りましょう」
手を引かれ、ライトニングは黙ってその後ろを歩いた
抱きしめた時、ホープの顔が見えなかった
前はそんな事無かったのに
それは身体が大きくなった証拠だ
まだまだ子供だと思っていたのにな…
繋がれた手は、もう自分より大きく
包まれる様に握られていた
彼の成長を感じ、切なさと嬉しさが入り交じる感情は何だろう
これが母性か愛情か
その答えが出るのは、もう少し先の話
end