13vol.2

□くだらない話をしよう
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【くだらない話をしよう】



「またそうやって…。僕がいるのに」


買い物を済ませ、荷物を持って颯爽と歩くライトニングに向かって、ホープはため息を付く。
そのまま荷物を軽々奪うと、右手を差し出して振り向いた。


「お手をどうぞ!」

「大げさなんだお前は」

「そんな事ないです」


文句を言うライトニングもまた、まんざらでもないような表情を浮かべ、ホープの手を取った。
段差に気を付けてくださいね。なんて言いながら、ホープはライトニングの歩調に合わせて歩き出す。


「少し、過保護じゃないか?」

「それくらいが丁度いいんです」

「こういう扱われ方は生まれて初めてだ」

「“初めて”じゃなきゃ、僕が困ります」

「そうか」

ライトニングはふと笑みを溢し、また歩みを進めた。

「産まれてくる前からそんなに張り切って…大丈夫か?」

「羨ましいです……女性は。ライトさんは…、もう。僕より10ヶ月も前からこの子のママで」

「ホープ…」


ライトニングの胸の奥が、愛おしいと締め付けられる


「だから、お腹の子が生まれてくる前から、“パパ”をしたいんです」

「随分ヤキモチ焼きなパパだな」

ライトニングは自分のお腹をさすりながら、話掛ける。

「僕がヤキモチ焼きって知ってるでしょう?ライトさんは。僕に似たら、きっとライトさんの取り合いです」

「なんだそれは」

「あぁ〜僕だけのライトさんだったのに、これから暫くこの子に独占されちゃうんだろうなぁ」

「お前まで子供みたいなこと言うな。私に似れば、案外早く親離れするかもな」

「ライトさんに似てるなら…僕が離したくなくなってしまう」

「嫌われる親の典型だな」

「そ、それは、困ります!!」

「それがアカデミー顧問のする顔か?」

「いーですよ。ライトさんと赤ちゃんしか知りませんから。ねー?」

「最近、こっちに話掛けてばかりだな」

「おはよう、行ってきます、ただいま、おやすみ……。お腹に近づいて話せるのは。その…なんていうか、パパの特権ですから」




なんて、産まれてくる前からずっと、君の事を話していたんだよ?
そりゃもう、バカバカしいくだらない話から真剣な話まで。

君は、これからどんな出会いをして、どんな人生を歩んでいくのかな。
大きくなったら、パパとママの冒険の話をしてあげたい。

アカデミーで、あれだけの研究員の上に立ちながら
出産当日、あたふたしてライトさんやスノウにまで叱咤された事は、君には一生秘密にしておきたいけど。

でも、君に人差し指を握られた時思ったんだ。
何があっても、この家族を守っていくのは僕なんだって。




end

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