13vol.2

□決意の先に
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【決意の先に】

アカデミー第1ユニット主任
ホープ・エストハイム

先輩は私と同じパルムポルム出身で同い年
あの事件で同じくパージを受けた
そして、第1ユニットへの勧誘を、主任である先輩直々にもらい、
先輩の事を知った時は

自分の才を認めて貰えた嬉しさもあったけど
それと同じくらい……
もう、運命だと思ったの

研究に取り組む真剣な横顔も
私が強引に腕を引いて、恥ずかしがって困る顔も
全部、全部魅力的で……

だからかな……
先輩の口から、「ライトさん」という言葉を聞く度に…
少しだけ寂しくなる

先輩から1度だけ、聞いた事がある
世界を救うために戦い、コクーンを支える柱になった…
とても大切な人、って

ゲートをくぐってやってきたセラさんやノエルを
とても嬉しそうに歓迎していた
セラさんは…ライトさんの妹だという
セラさんの手を優しく引く先輩に…ちょっと嫉妬した
姉妹だから…似ているのかな
私には…そんな事してくれないから


でも、でも……
私は、「今」先輩と同じ場所で同じ時代を共有している
私は、先輩から…離れたりしない
絶対に







「アリサ……君は連れて行けない」

「先、輩…」

先輩は試作のタイムカプセルで、未来へ行くと言った
未来へ行く。と言っても、あの2人のようにゲートをくぐって未来に飛んで行くわけじゃない
時間の進みを遅らせて、未来で目覚める
その間に、周りは数百年経っている……それだけの事
だから、未来に行けても……もう過去には戻れない

「私も行きます!!」

「君は優秀だから…解ると思う。これが、どれだけ危険な事か…」

「………………」

「それを解ってて、部下を連れてはいけないよ」

「部下…」

先輩は私を無視して、タイムカプセルを起動させる

「ここの事は頼んだよ。アリサ……君なら正しい“今”を導ける。僕が信頼してるんだ……少しは自信持ってくれるかな?」

「……未来に行っても。“ライトさん”には会えませんよ」

「…………………知ってる」

「なら!!」

「でもライトさんは今もヴァルハラで戦ってるッ!!!!」

「先…輩」

「“できるかできないかじゃない”…ライトさんは幼かった僕にそう教えてくれた。信じる仲間と共に歩み、未来を手にした思いがある」


大切な人を守る為なら…
自分の安否さえ厭わない…
その決断に、迷いは感じられなかった


「どうして…そこまで」

「側にいることだけが…愛じゃない」



あぁ…敵わない
敵うはずもないのだ
先輩の顔を見て、そう思った



「行きます。私も」

「アリサ!!」

私だって迷わない
残りのタイムカプセルに体を入れ、目を閉じた

「私だって、第1ユニットの一員です。それに、時空の知識は先輩より私の方が上ですから。ちゃんとサポートしないと!!」

「アリサ……」

「部下の勤めです…………そして、私の、信じる道だから」


先輩は、少しだけ微笑んでくれた
それだけで、十分

次目を覚ました時
私たちはちゃんと未来にたどり着けます
そして、セラさんとノエルに会いましょう
必ずです

必ず…

例え、目覚めた時が違っても…
私がちゃんと
未来に送り出してみせますから




先輩…今までごめんなさい





それが、私に残された唯一の存在意義




先輩の決意の先へ



ライトさんの笑顔に繋がる未来へ




end

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