13vol.2

□君がいない日々
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【君がいない日々】




喧嘩の発端はもう忘れた
きっと、些細な出来事だったに違いない

だけど、お互いの状態が不安定で
心の波が激しく揺れていたんだ


「お前はいつも一人で頑張りすぎなんだ、どうしてそう意地を張る」

「ライトさんに言ったって…分かりませんよ」

「言われなければ分からないな」

「僕だって…ちゃんと考えてるんです」

「それで体調を崩すなんて、世話ないな」


ホープが体調を崩している事は分かっていた
それなのに、私は


「言いたくはないが、“そういうところ”が子供なんだ」

「…………」

「…………」


ライトニングは大きくため息をつき、ホープの額に手を寄せる


「お前は何を焦っている」


諭すような声色で呟くと、ホープはライトニングの手を払った
そしてまた何か言いたげな顔をする
唇を噛みしめ、俯く仕草
子供の頃から変わらない癖


「何を考えてるか知らないが…自分の考えだけで無鉄砲に突っ走るなんて。お前らしくない」

「僕らしいって何ですか…」

「ホープ、どうした。変だぞ」

「僕たちの未来の事を真剣に考えて…何が悪いんですか」


僕たちの…未来?


「ライトさんのために頑張りたいって思って…何が悪いんですか」

「それで、超過勤務か?私がいつ頼んだ」

「…………もう、いいです」


もう、いい?
何がいいんだ?
何一つ心が晴れない言い合いは、ホープの言葉で終わりを告げる


「さようなら」


さようなら…
別れの挨拶
その表情にきっと“また明日”は無い


「…勝手にしろっ」


一人残された空間で、ライトニングは悪態をつくが
その言葉に、返る音は何一つ無かった







ライトさん、僕のお嫁さんになってください

お前の?

はいっ!

そうだな…後10年。お互いに独身だったら考えておこう

本当ですか!?わかりました!!


懐かしい夢を見た
14歳だったホープに言われた、告白の言葉
体の良い断り文句のはずなのに
ホープはキラキラと目を輝かせて頷いていた






ホープと連絡が途絶えて1週間
ライトニングは気晴らしにいつものバーに訪れていた
久しぶりの来店に、義弟はいつもの笑顔で迎え入れる
差し出されたコーヒーを手に取り、ホープの事を聞いてみた

「え?義姉さん、知らないのか?ホープがアカデミーの実習でここを離れるって事」

「離れるって…どういう意味だ?」

「俺も詳しく聞いてないけど、3年間実習でどっかに行くって言ってた。昨日電話来たんだけど…義姉さんに黙って行くなんて。なんかあったのか?」


3年
その言葉が急に重くのしかかる
アカデミーの事だ。きっと未開発の地へ行くのだろう
そう考えれば簡易な連絡手段なんて無い
そうした訓練も受けていることは普段から知っているのに
急に絶望感が襲ってきた
謝れない…
3年も


「いや、別に。……………苦い」


口にしたコーヒーの渋みが拡がっていく


ライトさんは、ミルクと砂糖…1個ずつですよね?



ホープ……









アカデミー実習生帰還
今朝からそのニュースが飛び交っていた
ライトニングはその帰還式を見るために、セラとの待ち合わせ場所に来ていた
何度も断ったのに、セラが行くと聴かなかった
でも、人のせいにして
ここに来るもっともらしい理由を、私は探していたのかも知れない

式典が始まる花火が遠くで鳴り響く

ライトニングは露店でコーヒーを2つ注文する
ミルクと砂糖の数を聞かれ、答えながらコーヒーを受け取ろうと手を伸ばす
すると、すぐ後ろからそのコーヒーに伸びる手

「彼女はミルクと砂糖1つずつ…僕はブラックで構いません」

ファンファーレの音はずっと遠くで鳴っているのに
優しい笑顔はすぐ側にあった

「どう…して。式典は?」

「セラさんに…ライトさんはここで待ってる。って聞いて。式典は……サボっちゃいました」

何が何だか分からないライトニングの手を、ホープは優しく引いていく
それから暫く歩き続け、ベンチに腰掛けると
勢いよく頭が下がる


「すみませんでした!」


それからホープは何度も頭を下げながら謝った
あの時言った言葉を悔いていた事
黙っていなくなってしまった事
あの時の、本当の気持ち…


「本当は…ライトさんにプロポーズしようと思ってたんです。指輪、買うために…その仕事もいっぱい入れちゃってて」


僕たちの未来の事を真剣に考えて…何が悪いんですか
それで…あんなに、一生懸命働きづめていたのか…


「結局喧嘩しちゃって…。出発する事、言おうと思ったけど。これから3年間居なくなるのに………そんな僕の言葉で、ライトさんの未来を縛ってしまっていいのだろうか。って。そう思ったら、言えなくて」


ライトニングは、あふれ出す涙を堪えることが出来ず
懐かしく暖かい声を聞いてただただ頷くしかなかった
謝らなければいけないのは自分も同じなのに


「でも、ダメでした。あっちに行っても、ライトさんの事ばかり考えて。帰ってきた今だって、貴方に会いたくて仕方なかった。やっぱり、僕…」

「3年……だぞ」

「………はい」

「すまなかった。3年も……お前に謝る事が出来なかった。3年、お前がいない世界を味わった……私は……」

「……………」

「お前が思っている以上に……弱いんだ」


年を重ねたせいかもしれない
強くありたいと願っていた時とは違う
側にいて当たり前だと思っていた事が、突如奪われ目の前は真っ暗だった


「もう勝手に……居なくなるな。勝手に……背負い込まないでくれ。私がいるだろう?」

「……ライトさん」


ホープは思わずライトニングを抱きしめた
少し痩せただろうか
そう感じて、抱きしめる腕に力を込める
鼻孔をくすぐる香りに、幸せを噛みしめた


「ライトさん……ひとつ聞いてもいいですか?」

「何だ?」

「独身ですか?」

「………ああ、…………悪かったな」


目を閉じて、ホープに体を預けてみる
たくましく成長した体に、しっかりと受け止められた


「いえ、全然!」



お前がいない日々は…もう、たくさんだ





end





ひで様、リクエストありがとうございました!!
いかがでしたでしょうか??w

FF13-2のサイトじゃ、“紳士的で忍耐強い”なんて書かれていますが、ライトニングの前では弱さをさらけ出して欲しいですね(願望)
それはライトニングもまた然り(願望)
って、私の願望ばっかで書いてすみませんでしたw

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