13vol.2

□たまにはデートでも
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【たまにはデートでも】


スタンドミラーの前で悩むこと30分。
ベッドの上に散乱する服を見てライトニングはため息をつく。
確かに余裕を持って起きたはずなのに、待ち合わせ時間はもうすぐそこまで迫っていた。


「……これ、でいいか?……いや、この色の方が…」


さっきからそんなことの繰り返し。
昔はこんなこと無かったはずなのに、いつからだろう
服装ひとつで悩むようになってしまったのは。







「すまない……遅れてしまって」

「いえ、僕も今来たところですから」


ライトニングに気付いたホープは柔らかな笑顔で迎える。


「じゃあお前も遅刻じゃないか…デートに、揃って遅刻か」

「ラ、ライトさん…常套句って知ってます?」

「な……。本当、どんどん可愛げがなくなっていくな…」

「僕ももう20歳ですから」

「…6年も経てばそうなるか」


出会った頃のホープは、小さくて可愛くて純粋で
見ているだけで気持ちがホクホクしていたが、
最近のホープは、なんというか……
どうもこちらの調子を狂わせる。


「じゃ、いきましょう」


変わらず人懐っこく手を取るその態度も
僅かに熱を帯びる。


「あ、僕新しい通信端末が欲しいんです…見に行っていいですか?」

「あぁ、構わない」




いろとりどりの機種を目の前に、ホープは目を輝かせる。
機能を見比べては、手に取り使いやすさを確かめる。
そういえば昔も2人でここへ来たことがあった。
ホープが初めて端末を買う時に同行したのだ。


「ライトさんはどっちがいいですか?」

「私は…、メールと通話ができればそれでいい」

「それは全機種できますよ」

「なら、後は見た目だな……こういう感じの」


ライトニングはひとつ手に取りホープに渡す。
ホープは渡された機種を確かめ、1度大きく頷いた。


「じゃあ、これにします。ライトさんは変えないんですか?今の機種もう結構使ってますよね?」

「あ、あぁ…言われてみればそうだが…」

「今なら『カップル割』で本体価格が半額になります〜。いかがですか〜?」


カップル!?
ライトニングは聞きなれない単語に言葉を失う。
それを余所に、ホープは店員に笑顔で答える。


「じゃあ、カップル割で、これとこれ…下さい」

「かしこまりました」


店員は機種変更の手続きへ行ってしまう。
慌てて店員を止めようとするライトニングの手を、ホープは強く握った。
その意図が分からず、今度はホープに言葉をぶつける。


「ちょっと待て!!!ホープ」

「いいじゃないですか…。どうせ1機種分の金額で買えるわけだし」

「そ、そうじゃ…なくて」

「僕からのプレゼントです」



手渡された端末を見て、ライトニングは複雑な心境になった。










人気のない公園を歩く2つの影


「まだ、怒ってるんですか?」

「…………………」


別に怒っているわけではない。
いい買い物ができたと思うべきなのに…。

「ライトさん」

「……………」


追いかけてくる足音が消えて
ライトニングは思わず足を止める
振り向くのが怖い
もし、ホープがそこに立って居なかったら…
そう思うと、急に胸が締め付けられた。



「前に、あの店で端末買った事……覚えてますか?」


振り返ると、ホープは足を止めて立っていて
真剣な眼差しでこちらを見ていた。


「あの時、『家族割』を勧められたんです」


覚えている。
確か、私たちは姉弟に間違えられた。


「まだ、子供だな…って思い知らされました。早く大人になりたい。ライトさんに追い付きたい。そう思ってました」

「でも、さっき…『カップル割』を勧められて、嬉しくなっちゃって……」

「………子供じゃないか」

「そうですね。そんな事で喜んでるなんて……子供ですよね。でも、他人から……ライトさんに釣り合う事を認められたような気がして」

「そんな事……他人が決める事じゃないだろう…」

「今朝だって、ライトさんは『デート』と言ってくれた。たぶん、きっと…初めて」


そんな些細な事をも、真剣に受けとめていたのか…
何かを決したようにホープが歩き出す。
ライトニングは思いっきり抱きしめられ、体が大きく仰け反った。


「嬉しいんです。いくら子供だって言われても構わない……僕は貴方が好きだから……、そういう言葉に一喜一憂してしまう」

「ホープ……」

「好きなんです……誰にも負けないくらい」

「………お前はいつも突然、だな」


体を少し離し、互いの目を見つめる。
夕日に当てられたホープの瞳はきらきらと輝いている。
この瞳が好きだ。
何年経っても、色あせる事のない、失いたくない光。


「キス…してもいいですか?」

「な、何を突然…」

「突然じゃないです…ちゃんと聞きました…答えて、ライトさん」


吐息が感じられるほどの距離
心臓が痛いほど早く脈打つ


「ずる、い…」


嫌なら本気で逃げることぐらいできる。って
分かっているくせに……


「ライトさん…」

「ホー…プ」


そっと触れるようなキス
柔らかく甘い痺れが訪れる
名残惜しくて、離れそうになる唇を追いかけた

何を着て行こうか
そんなことで迷っていたときから…
こうして触れられる事を、望んでいたのは
私の方だったのかもしれない


「また、出かけよう」

「それって、デート。ですか?」

「………そうだ。デート……だな」

「はい!もちろん」


この先、もっと。
たぶん、ずっと。




end




めぐ様、リクエストありがとうございました!!
甘々目指して頑張りました。いかがでしたでしょうか??w

日常シチュで、「好き好き言うのはホープだけど。実際無自覚に惚れてるのはライトさん」感を出せてたらいいなと思います。
 

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