13vol.2

□Sign
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【Sign】




携帯のバイブが響く
ホープは慌てて携帯を開いた
内容を確認して、ニコニコしながら返信を打つ

「ホープ、何ニヤついてんだよ」

「え!?ニヤついてないよ!」

慌てた様子で返事をし、あからさまに携帯を隠す
その勢いで机の上にあった飲み物が勢いよく倒れた

「わぁ!拭くの拭くの!」

「…………お前、彼女でもできた?」

「え!?」

教室に響き渡る声
今度は立ち上がって大げさな声を上げた
その様子から、図星であることは間違いないと、目の前の友人は確信した

「いいな…俺も彼女欲しい」

「な、何…言って…。僕たち学生の本業は…勉強であって」

「んな事言うやつ今時いねーって……つーか何?どんなメール?デートの誘い?」

「そ、そんなんじゃ…今日は残業があるって内容だよ」

「はぁ!?お前…社会人と付き合ってんの!?」

「ちょっと!声がでかいよ!!!」

クラス中の視線を集めてしまい、2人はその場から離れた
場所を変え、友人の質問攻めに合ったホープは
渋々答える
その度目を輝かせる友人の姿に、嬉しいやら恥ずかしいやら

「年上か〜付き合うの大変じゃないか?」

「そんな事ないよ。あ、またメール来た」

「何?何だって??」

「“私はこれから休憩に入る”って」

「それだけ?」

「それだけ、って…ライトさんいつもこんな感じだよ」

「女って、絵文字とか顔文字た〜っぷりのメール送ってくるもんじゃないの?」

言われたホープは可笑しそうにその言葉を否定する

「ライトさんのキャラじゃないよ」

「結構クールだな…業務連絡みてぇ」

「失礼な。ライトさん可愛い所いっぱいあるんだから」

「うわ、惚気やがった」

それでも、ホープの幸せそうな顔を見ている事は
友人としても嬉しい事だった

「“絵文字使って下さい”ってかえしてみたら、どんなの打つかな?」

「わ……分からない」

けど、ホープ本人も気になるようで、返信内容の最後にその文章を打ち付けた
送信を確認して、彼女の返事を待つ

「……来ないな」

「やっぱり、普段使わない人だから…困らせたかも」

それから20分後…
届いたメールを恐る恐る開くホープ
メールを開く作業に、緊張した面持ちで挑む

「………………」

「…………………怒ってた?」

「………ううん」

何故か笑いを堪えてホープは答えた
一体どんな返信だったのだろうか…

「絵文字?」

「うん、絵文字…」























「え…これ、だけ?」

「うん」

「20分で!?」

「うん、20分で」

だけど、ホープはとても嬉しそうだ

「20分悩んで、コレ選んだと思うと………すっごく、可愛いなって思っちゃって」

言いながら、ホープは立ち上がり、携帯でコールを始める
きっと、彼女にだろう


「もしもし、ライトさん?絵文字ありがとうございます」


楽しそうに会話するホープを見て
あの絵文字は、ホープには特別な記号に見えていたのだろう


「いいな…恋してる、って」


そう思える、笑顔が、今目の前にある




end

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