13vol.2

□Farewell my friend
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【Farewell my friend】





ー僕は今、決別をしなければならないー





長い時間、僕たちはこの関係を続けてきた

出会いはとてもロマンチックとは言えないが、一生忘れることの出来ない
衝撃的なものだった
たくさんの過ちを…幾度となく道を踏み外し
大切な人を失った
気の遠くなるような道のりの果てに
大切な者を守る事が出来た
いつでも、側に居たのは貴方だった
それが心地よくて
ずっと、ずっと甘えていたんだ




「ファロン曹長…お話が」

ライトニングは一度部屋の時計を確認し、ふと笑みを浮かべる

「もう勤務時間外だ…仕事の話か?」

「すみません…。いえ、仕事の話じゃありません」

「そうか、なら聞こう」

「い、いいんですか?」

「私とお前との仲だ。今更何を言う。それに…もう、“ライトさん”で構わない」

この笑顔に、何度心を揺さぶられた事か
ホープは緊張を隠しながらいつもの様に言葉を発する

「今日で、研修も終わりです。今まで、本当にお世話になりました、結構迷惑も掛けましたし」

「だな…。まぁ、お前が本番に強いのは知っている…気にするな。上手くやっていけるさ」

この研修を終えたら、僕は配属先が決まり
その部隊で厳しい毎日がやってくる
自分の希望から、ライトさんと同じ部隊になることはまずあり得ない
こうして2人でゆっくり話せるのも、最後になるかもしれない
一生の別れでもないのに、胸が締め付けられそうだ
ここで自分が何を言わずとも、ずっとこの関係が続くはずなのに
僕は、何故か焦っていた

「いつか、お前に助けられる日がくるのか…」

「その時は、頑張ります…。全力で、守りますから」

「………………期待してるぞ」

「はい!」

素直に、彼女の言葉が嬉しい

「何年お前を見てきたと思ってる……私が保証するんだ」

「嬉しいです」

嬉しいけど…




「本音を言うと、少し、寂しいな」

「え…」

「希望する部隊の件は前から聞いていたな?」

僕は控えめに頷く

「単純に“あぁ、ずっと居られない”って……当たり前の事なのに」

まるで、育てた雛が巣立っていくのを見守る親鳥の心境
彼女の目を見ていれば…
彼女の態度を見ていれば…
分かるんだ
分かってしまうんだ


「頑張れよ…私はいつでもお前の味…」

「味方じゃ…嫌、です」

「……………ホープ?」

言った…
もう、後には戻れない

「いや…、その、本当に嫌って事じゃなくて」

「…?」

「これが…もう、僕にとって最後のチャンスだと思うから。言います」

「最後って…」

吸い込まれそうな双眸に、心拍数は跳ね上がる




ー僕は今、決別をしなければならないー




「ずっと、貴方が特別でした。」

大好きで、大切だから、失うのが怖いから
ずっとこのままでいい…そう思っていた
でも
それよりも…勝ってしまったんだ
この気持ちを伝えたい想いが

「いつか、貴方と対等になって……貴方を迎えに来ても…いいですか?」

「ホープ…」

気がつけば、力一杯ライトさんを抱きしめていた
今はもう、僕等の背丈は同じ
顔は見えないけれど…きっと驚いているに違いない
次の言葉を待って、じっと耐える

「わ、私は…」

上擦った声…
思わず彼女の頭に手を添えて、優しく包み込んだ


「怖かった…」

「え?」

「気持ちを押し殺していれば………ずっと、居られる。失わないで済むなら……それで。それが最善だと…私は思っていた」

「ライト…さん」

「お前が離れて行ってしまっても……その背中を見送る事が……私の勤め、だと」

「僕は嫌だ……自分の気持ちを伝える前に誰かに盗られてしまうくらいなら…いっそ」

正直、ライトさんが他の誰かを選んでしまうなんて、僕は嫌だ
貴方みたいに“勤め”だなんて割り切れない
ワガママで、子供で
でも、それだけで片づかない程愛してしまった

「ライトさんの気持ちを…聞かせて」



こんなにも理解し合っているのに
変わらず側に居たいの願うのに
ずっと友達だなんて
僕は…



「私は……、私の…」


わずかの沈黙が、何秒にも感じられる
応えて欲しい気持ちから自然と力が入ってしまう
痛くないだろうか…そう心配した瞬間
消えてしまいそうな程の吐息で囁かれる






最後の恋に、したい






僕はその意味を理解するより早く
唇を奪った
たったひと言に、彼女の溢れる想いを感じてしまったから

「最後の恋…はじめましょう。ライトさん」

恥ずかしそうに目を伏せるライトさん
その目尻に唇を寄せる
互いの瞳に笑顔を映し、今度は深く口づけた






ー僕らは今、決別の道を選ぶー

そして

ー新たな道をー

共に手を取り、寄り添う未来を



end

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