13vol.2

□Mirage
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【Mirage】


自分の荒い息づかいと足音
時間を増すごとに上がらない足や腕

「ライトさん!!!待って下さい!!!」

前方を駆けるライトニングとの距離は縮まらない
むしろ、どんどん離れていっている気がする
やっとの思いで見付けたのに…
さすがに現役軍人に敵う脚力は持ち合わせていないが
それにしても、彼女はどんどん先を走っていく
僕の声を聞いて、一瞬振り返る
気づいてくれた、と一生懸命に手を振るのに
全く気づいていないように…
まるで僕が見えていないように…
ライトさんはまた走り始めてしまう
その光景に少し傷ついた

やっとの思いで彼女の背中を見付けたのに
このまま諦めたくはない

「ライトさん!!!ライトさんっ!!!!」

喉が潰れそうなほど叫んだ
僕は、どうしてここまでライトさんに固執しているのだろうか…
どうして?
あれ…………どうして…?
一緒に戦った仲間だから?
それはもとろんそうだ。だけどそれだけ?本当に、それだけ?

「ライトさん!!!」

「どうした?ホープ」

え?

自分の後ろから聞こえる声に身体が止まる
聞きたかった声に、僕は笑顔で振り向いた
途端にあふれ出す光に目を細め、手をかざし、眩しいながらも目を凝らす

「ホープ?どうした?」

「…………………あれ?」

気がつくと、部屋の天井が見えた
それから心配そうに顔を覗かせるライトさん

「魘されていた…怖い夢でも見たのか?」

「夢……怖い…。はい、怖かったです」

そう答えながら、僕はライトさんの手に触れた
少しひんやりしていて、涼しかった

「どんな夢だった?」

「笑わないでくださいね?」

「あぁ」

「走っているライトさんに全然追いつけない夢です」

直ぐに、ライトさんの笑いを堪える息が漏れる

「笑わないって言ったじゃないですかー」

「それが、怖い夢?」

「ほんとに追いつけないんですよ?呼んでも、振り返るだけで僕の事全然見えてないっていうか……」

同じ場所にいたのに、居ないような…
まるで僕を忘れてしまったような…
怖かったんだ
ライトさんに忘れられるなんて…
考えたくもない

「よかったな…夢で」

「もーー」

文句をいいつつ、ホープも次第に笑みを溢す
シーツのすれる音と共にライトさんの体温が僕を包む
それで初めて、胸の奥の暖かな気持ちが溢れそうになった
あぁ、僕はライトさんが大好きなんだ…

「ライトさん…どこにもいかないで下さい」

「?……あぁ、大丈夫だ」

抱きしめ返す腕に力を込める

「ライトさん…」

「もし、私が居なくなっても…見付けてくれよ?」

「え?」

切なそうな表情に胸が締め付けられる

「信じてる」

「ライトさん?」

嫌な予感がして咄嗟に彼女の腕を取る
光の粒子が漂い、腕の感触が失われていく
ついに、ライトさんはその光に包まれて消えてしまった

「ライトさんっ!?」








気がつくと、目の前には先ほどまでライトさんを追っていた風景

「夢……」

夢は……さっきの部屋…
二人で居たあの空間が夢……
でも僕は寝ていない……
ヴィジョン…なのか?もうファルシの影響は受けないはずなのに


「ホープ!!やっと追いついた…どうしたんだ?急に走り出すからびっくりした」

追いついたスノウは息を切らしてしゃがみ込む

「ライトさん…。あれは確かにライトさんだった…」

「義姉さんが!?」

「だけど……僕を見ても……まるで他人のような、僕が見えていないような雰囲気で」

怖かった
まるで蜃気楼のように現れて、消えてしまった

「『見付けてくれよ…信じてる』」

「?」

「ライトさんが…さっき夢の中で僕に言った言葉」

「夢…?ホープ、ずっと走ってたのに…夢…みたのか?」

「もしかしたら…僕の勝手なヴィジョンかも、しれない。そうだったらいいな…っていう」

「この辺りは地形が歪んでいるせいで、時々“そういうの”が見えるらしい…って聞いたけど」

「でも…僕は、そのヴィジョンをカタチにしたい。ライトさんも…“あの時”見たヴィジョンを叶えようとしているなら……僕だって」

貴方の震えていた手を、確かに掴みたい

「おう…ここで立ち止まってらんねーな」

このまま、夢として消えてしまうかどうか…
僕の行動次第だ
僕は…
僕が…


「スノウ。僕ね……ライトさんに“好きです”って言えてない」

「!?お……俺に言うなよ、びっくりした」

「そうだね、本人に言わなきゃいけないよね」

「返事聞くまで、諦められない。だろ?」

「うん」

ライトさん…
僕が見たビジョンは、僕が欲したのかな
それとも…貴方が見せてくれたのかな

「ライトさん…今、行きますから!!!」















「ホープ?」

呼ばれた気がした
だけど、振り返っても何もない
当たり前だ…あの時、後ろをついてきていたホープはもう居ない
黙って置いて来たのは私の自信の意志なのに
振り返り、誰も居ない事に寂しさを憶えたのは何故だろう…



ライトさん…今、行きますから!!!



「また、声が…」
幻聴…?まさか本当に私を捜しているのか?
そんなはずは…

「これが…“私の希望”だとでもいうのか…?」

自分自信の心の奥底を覗くのが怖い…
私はここだ、ここにいる…そう叫んでいる

「ホープ……」




end

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