13vol.2

□beloved
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【beloved】


色とりどりの花を束ねたリースを手に
ホープは一人歩いていた
巨大な記念碑となったコクーンは、今、こうしてグラン=パルスに生きる人間を見守っている

記念碑が聳え立つその横に
Tranquil sleep“静穏なる眠り”と名の付いたその場所で
ホープは足を止めた
たくさんのクロスがこの地に刺さり、そのひとつひとつに名前が彫られている
あの時犠牲になったたくさんの命が、ここに眠っている


ノラ・エストハイム


そう彫られたクロスの下に、母親は居ない
この季節、ホープは毎年この場所を訪れる
だけど、今日は特別だった


見覚えのある背中を見付け、ホープは静かに近づいた
気配に気づき、彼は少し恥ずかしそうに振り向く

「ホープ…よ、よっ。思ったより…早かったな、来るの」

手向けられていたのは純白のリース

「もしかして……あれから毎年」

自分よりも先にいつもかけてあったこのリースの謎がやっと解けた
前に、スノウの前でもこの謎のリースの話をしたことがあった
だけど、スノウは何も言っていなかった

「あー…その、」

「ありがとう…スノウ」

「あ…おぅ。こういう事も…償いの一つになれば…って」

目を伏せるスノウに、ホープは優しく首を振った

「もう、いいんだ…もう、十分だよ」

「そんな事ねーよ!!」

「僕、昨日…思い知ったんだ」

「?」

「母さんの気持ち…親の、気持ち」

照れくさそうに微笑むホープ
胸元から1枚の写真を取り出し、墓前にしゃがむ
そして、嬉しそうに言葉を紡ぐ

「母さん…僕ね、昨日…父親になったんだ」

その様子を、スノウは静かに見つめた

「顔は…僕に似てるかな?でも髪の色はライトさん…男の子。すごく小さくて、可愛くて…愛おしい。父さんも、すごく喜んでる」

写真には、我が子と愛する妻が写っている

「前は…母さんが、どうしてあの時…持ったこともない銃を持って、戦おうとしたか、解らなかったんだ」

でも……

「今は、解るよ。僕も……守りたいと強く思うよ。僕じゃ、頼りないかもしれないけど。例え非力だと、無力だと解っていても………。僕も母さんと同じ気持ちなんだと思う」

立ち上がり、スノウを見つめる

「大丈夫。至らない僕だけど……スノウたちが居てくれるから」





僕は大丈夫だよ






携帯のベルが鳴り、光るディスプレイには
愛しい妻の名前

「もしもし?ライトさん?うん、今スノウと一緒です。はい、…はい。じゃぁ、これから家に寄って持って行きますから。他に必要なものはありますか?」

優しい風が頬を撫でる

「あの、ライトさん………。産んでくれてありがとう。愛しています」

スノウは、電話の向こうのライトニングが赤面して慌てているのが容易に想像できて微笑んだ

「何度でも言いますよ……本当の事ですから」

ホープの横顔は、まだ幼いながらも
しっかりとした父親そのものだった



end

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