13vol.2

□protect you from everything
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【protect you from everything】



行くぞ


そう言われて、僕は付いて行くしか無くて
置いてかれないように必死だった
行かなければ、ここで死んでしまうか
聖府に捕まり……殺されてしまうか
引き下がれば、足下は崖の淵
進む道は果てしなく険しい
生きているのに、生きている心地は微塵もしなかった


もう、終わり

どうせ

ルシなのに

ルシだから

アイツのせいで

復讐してやる


そんな言葉が僕の全てを支配していた気がする
先の見えない現実
いつも貴方に答えを求めた
答えられるはずもないと、解っていたのに
答えられない、貴方のせいにしたかった
なのに…
突如示された答えに、僕は強く反発した

「ノラ作戦はやめよう」

「戦え、迷うなってけしかけたのに…見捨てるんですか!?」

貴方が大嫌いだった
行動だけじゃない、思考まで置いてけぼり

「見捨てはしない、私が守る」

僕には解らない事、解った貴方が
僕には無い、強さを持っている貴方が
そんな言葉を吐く貴方が…大嫌いだった

自分には無い全てのものを持っている貴方に
嫉妬していたんだ
貴方のようになりたくて
なれないもどかしさに苦しんで
混乱して
悩んで
迷って
間違って
気がついて……




「ノラ作戦……失敗です」

「守るから。私が守る…」

抱きしめられて初めて貴方の存在の大きさを思い知った

「あの…僕も。ライトさんを守れたら、って」

一瞬大きく見開かれた瞳
わずかに遅れて、優しく細められるそれに
僕は吸い込まれそうになった
おでこをつつき、貴方は微笑んだ
とても綺麗な笑顔


「本当です」

「?」

「僕も、ライトさんみたいに強くなって…」










「人って、やっぱり…自分に無いものを持っている人に憧れるんですよ」

豪勢な食事を前に、出会った頃を思い出す
今日は彼女の27回目のバーズデー
最後のデザートを口にしながら、貴方は訝しげな表情を浮かべた

「今じゃもう、十分強いだろ」

「そりゃ…あの時に比べたら」

「なら…憧れは終わり、だな」

貴方らしくない台詞に、僕は心底驚いた

「これからは…“本当に守りたいもの”のために、生きてみればいい」

「………だから、今夜の食事の誘い、受けてくれたんですね」

なんとなく、意図が理解できて目を伏せた
いつもなら断りそうな誘いに、今日はOKしてくれた
これまで長く付き合ってきたのだ
言いたい意味が…わかってしまう
そして同時に思う。なぜ僕の気持ちは伝わらないのだろう、と

「ホープ…」

「嫌です。僕の話を聞いて、それでもライトさんが“そうしたい”なら…。」

「…………」

「僕はライトさんの事、好きです。一人の女性として、貴方が好きです」

「それは…」

「“母親を求めてる”ですか?」

図星を突かれたように、黙ってしまうライトさん

「始まりはそうだったかもしれない、強い憧れと母親を求めていたのかもしれない…でも」

今は違う

「今、僕はライトさんを守れるくらい成長できた」

「だから…」


泣きそうになるライトさんの手をそっと握る


「結婚してください」

「お前…それは」

「プロポーズです」

「…………………私は」

「僕の事、好きじゃないなら………断ってください」

「私とお前じゃ…」

「恋愛対象になりませんか?」

「ち、違う!………でも、歳がいくつ離…」

「歳なんか関係無い!!!」


ねえライトさん…


「ライトさんが気にしているのは……僕の事なんでしょう?」

「…………」

「そんなの、ちっとも嬉しくないです」

自分は相応しくないなんて、くだらない事思っているんですか?
あのときのように、僕の事を本気で思ってくれるなら








守るから。私が守る…








「守らせてください。僕の一生をかけて、貴方を…守ります」

「ホープ…」

やっぱり今だって
僕にはないものを持っている貴方に憧れている

「僕と結婚してください」

指輪のケースを差し出し
頭を下げる
そっと見上げると、ライトさんは静かに涙を流し
その綺麗な涙を拭いながら
しっかりと頷いた
見間違いなんかじゃない
左手の薬指に、誓いの指輪をはめる
その指輪を眺め、次に視線がぶつかると
貴方はあの時と変わらぬ笑顔で微笑み返した





幸せにする




その笑顔を、守ってみせます
本当に守りたいものを、見つけたから

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