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□You are my hero
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【You are my hero1】



時々、夢を見る
目が覚めて、見慣れた天井に安堵すると同時に
ひどい喪失感に駆られる






エアリス…










「おはよう、クラウド。もう、お昼だよ?」

「…………」

「今日は教会、行くの?それならマリンも」

「………」


クラウドは覚束無い足取りでティファの横を通り過ぎる
ティファは深いため息を一つ、クラウドの朝食の準備をするため、後を追った


「クラウド、どうしたの?」

「んー、どうしたんだろうね…」


ティファはマリンの頭を撫でながら、笑ってみせる




「ティファ、行って来ます!」

「はい、行ってらっしゃい!クラウド、気を付けてね」

「わかってる。マリン、しっかり掴まるんだ」

出掛ける準備を済ませたクラウドは、フェンリルの後ろにマリンを乗せる
マリンは言いつけを守って、クラウドの背中にしがみつく

「夕方には戻る」

「うん、わかった」


ティファは2人を見送ると、家事にとりかかる

「今日は天気がいいし、布団、干そうかな」

クラウドが寝ていたベッドに腰を鎮める
そのまま倒れ、天井を見つめた

「……そうだよね、今日だもんね」









教会に出来た泉の横で、マリンは花を摘んで飾りの類を熱心に創っていた
クラウドは、その隣に腰を下ろし光を映す水面を眺めていた
不思議と心が落ち着く

「クラウド!これ、なんていうお花?」

「俺は花に詳しくない」

「そっか〜。このお花、お花屋さんじゃ見ないんだ」

「そうなのか……」


昔は、この花をエアリスが育て、スラムで売っていた
当時は花自体が珍しかった


「花は好きか?」

「うん。前に、クラウド、このお花…くれたよね?」

「………………そうだったな」


あまり記憶力に自信がある方ではない
だけど、そのことはしっかりと憶えていた
初めてエアリスと出会った時の事










「花なんて珍しいな…」

「あ、これね。気に入ってくれた?1ギルなんだけど、どう?」

「……もらおう」

あの時なぜ、花を買ってしまったのか

「わあ、ありがとう!はい!」

エアリスの嬉しそうな表情を見たら
特に疑問も持たなかった




再び出会い



「あのときは、お花、買ってくれてありがと」



そうお礼を言われたとき初めて
買って良かったと、心の奥で思っていたかもしれない








「お花はいかがですか?」

マリンは小首を傾げて一輪の花を差し出す
花屋のまねごとをしているのだろう

「ひとつ、もらおう」

マリンは嬉しそうに花を差し出した

「クラウド、本当はお花好きでしょ?」

「…どうしてだ?」

「だって、お花見るクラウドの目、とっても優しいんだもん。ティファには内緒にしてあげるね?」

まるでクラウドの隠したい趣味を秘密にしてあげる、とでもいうように
マリンはクスクス笑う



それはきっと、守れなかった大切な人を
想う気持ちがあるからかもしれない



マリンから受け取った花を、マリンの髪に挿してやる

「似合う?」

「あぁ」

微笑むマリンに、クラウドは心を癒される
彼女がくれた未来で俺は
こうして微笑みを返すことができる

今日は彼女の命日で
暖かい日差しが差し込む教会は
天国にもにた心地よさに包まれていた



「エアリス…」



クラウドは愛しい人の名前を小さく呟いた
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