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□Dear Friends
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【Dear Friends1】


今、焚き火を挟んで目の前にあるのは
魚の焼き具合を今か今かと見つめる瞳

これで同い年なんだと…聴いた時は驚いた

一国の王女と老いぼれジジイ…そしてこの脳天気な20歳児
俺がしっかりしなければ、この旅は苦難を強いられるだろう
出会った当初は、ずっとそう思っていた


「ファリス、旨いぞ!」

バッツは焼けた魚をグイッと差し出す
ファリスは受け取って、葉の上に乗せ魚をほぐし始める

「……お前って、そんな食い方だったっけ?」

「レナの喉に刺さったらどうする…こうしてやれば、王室育ちでも食えるだろう」

「ふーん、そっか。優しいな!」

ファリスは目を丸くして手を止める
は?どこが?と言いたげな顔を向けるが、バッツは魚に夢中でこちらを見ちゃいない

こいつはいつも突拍子のない事を言う
さも、当たり前のような物言いなもんだから
突っ込む事を忘れる時さえある程だ
ほぐした魚をテントにいるレナとガラフに渡し、
気にせず自分の魚に食らいつく
すると、今度はバッツがこちらを見つめて止まっていた

「なんだ?」

ファリスはまた一口頬張り、口周りに付いた焦げを豪快に拭った

「ワイルドだな…って思って」

「そうか?…普通だろ」

「女の子にしちゃ珍しいって」

“女の子”
バッツが俺が女だと知って以来、たまにこういう事を言う
別に女であること事態が嫌というわけじゃない。
が、なんだかむずがゆい

「……海賊に拾われて育ったんだ。レナみたいに育つわけないだろ。俺にとってはコレが普通なんだ。俺がおしとやかになってみろ?気持ち悪いだろ」

「…………ぷはっ!確かに!」

「…笑ったな?」

「だって、想像しただけで……ククッ」

「……チッ」

「ハハハ…ファリスは今のファリスでよかった」

「………………は?」

「どんなファリスでも、ファリスはファリスだけど………今、俺の目の前に居るファリスが一番好きだよ」


バッツの髪が、サラリと夜風に揺れ
ファリスの手から、するりと魚が落ちていく



「ファリス!何やってんだよ!落とした落とした!」

「へ?あ?…あぁぁぁぁ!!お前のせいだからな!」

「え!?何で俺のせい!?」

「それは!…………それは……その、お前が変な事言うからに決まってるだろう!!」

「俺、変な事言ったか?」

「お、俺に聞くな!」

「全然意味わかんない」


うるさいうるさい
お前はいつもそうだ



「なんだよ、怒鳴る事ないだろ。俺はファリスを頼りにしてるのにさ」

「…頼り?」

「正直、レナとガラフと3人の時は不安がいっぱいだったけど。お前がいてくれて、心強い」


バッツは腕を伸ばし、拳をこちらへ向けてくる
細いくせに、長年一人旅をしていた男らしいゴツゴツとした拳、傷だらけの腕


「……あ、当たり前だろ。この俺を誰だと思ってる」


ファリスも一度押すようにして拳を合わせた
バッツの屈託のない笑顔に、つられて笑みを溢す


「……今晩一雨きそうだな」

バッツは空を見上げ、呟く

「あぁ、そろそろテントに戻るか」


この旅を初めて、少しずつバッツを認めようとする気持ちが芽生える
今までにない、不思議な気持ちだった

これからの旅は、きっと苦難の連続だろう
だが………
それも悪くない

お前との旅は、飽きそうにない、からな
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