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□Smile×Smile
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【Smile×Smile】


表情を消す事は、訓練の1つだった。
それは、聖府に深く関わる軍人であればあるほど、そう教育される。
例え、不利な状況下でも。
例え、拷問を受けようとも、その表情を崩す事は無い。


笑う。
という事を、随分忘れていた。


「お前は、いかなる状況下でも冷静な判断ができる…。敵に一瞬でも気を許し、弱さや動揺を悟られるようでは、軍人失格だ」
軍学校で訓練生だった頃
教官から言われた、賞賛の言葉






「ライトさ〜ん!もうすぐできますよ〜!」
キッチンの方からホープの声と
美味しそうな香りがやってくる

「すまない、今手伝う!」
ライトニングは慌てて立ち上がり、食器を戸棚から取り出す
二人がけのテーブルには向かい合ってランチョンマットがしかれている

「今日はクリームパスタです。ライトさん、好きでしょう?」
皿に盛りつけながら、ホープは笑顔を浮かべる

「何で分かるんだ?」

「だって、前に…とても美味しそうに食べてくれたから」

言われたライトニングはハッとして頬を抑える
「そ、そんなに…顔に出ていたのか?」

「いえ…そこまでじゃないですけど…わかりますよ」

「どうして…」

「どうしてって…。ライトさんの事だからですよ」
当たり前。
とでもいうような表情で、ホープはフォークを差し出す

ライトニングは苦笑い
フォークを受け取り、もてあそぶようにクルクル回す





ライトさんの事だから…か
私は、ホープの事をどれだけ知っているのだろうか

例えば、ホープはいつも楽しそうだ
それを「ライトさんの側にいれるから」と言う

返答に困っていると、「出会えた事が嬉しい」と言う
とても優しい声色だ
陽だまりのような暖かさ

初めは、どれもくすぐったいと感じるばかりだった





でも、今は…





「明日、どこかへ出掛けよう…。二人で」
ホープの手が止まり、目を輝かせる

「いい…ん、ですか?」
ライトニングの狙い通り、ホープはみるみる笑顔があふれ出す



あぁ、私は、この顔に弱いのか…



「ショッピングモールに、新しい店ができたんだろう?」

「なんで知ってるんですか!?」

何日も前から、CMは流れていた
その度ワクワクした表情で見つめるホープを知っている
ライトニングの休日は不定休。
気軽に誘う事ができないの事をホープは知っている


「お前の事だ…すぐわかる」

「ライトさん…」


側にいられると、
出会えたからと、お前は言う
それもある…だけど


私が、心を開けた事が……きっと






「軍人…失格、か」
ライトニングは呟き、パスタを一口頬張る
自然に、笑みがこぼれた




end

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