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□不変と進歩-Maid To Order-
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【不変と進歩-Maid To Order-】



「どうした?」

電子音が切れて、大好きな声が耳に心地よく響く
なにか用事があるわけではないが、ただ、声が聞きたかった
先週会ったばかりなのに、どうしてだろう



今、目の前に映る空の色が違うせいだろうか







「ライトさん、今、空見えますか?」

「あぁ………綺麗だ」

目の前に広がる濃紺の空に
クリスタルの粒をこぼしたような星の輝きに
ライトニングは感悦する

「今日は、1年で最も星空が綺麗に観測できる日なんです」

「そう…なのか。ここでも、こんなに綺麗な星が見られるんだな…」


その声を聞いて
ホープは胸が熱くなる


「ライトさん…」

「ん?」

「知ってますか?満天の星空の夜、一等星の流れ星に願いを馳せると叶うっていう…おとぎ話」

「あぁ、子供の頃に…母親に聴かせてもらったことがある」

「じゃ〜、何か願って下さい」

「流れ星…出るまで時間がかかるだろう」

「それは大丈夫です」

一体、何が大丈夫なのか、ライトニングにはさっぱり分からない

「ライトさんの願いって何ですか?」

「い、今すぐには…」

常日頃思っている事を願うのが妙に恥ずかしくなり、ライトニングはごまかすように咳払いをする


「5…4…3…」
ホープのカウントダウンが始まり、ライトニングは慌てる

「2…1…」

ゼロ
その声と同時に願う
お前に会いたい。と

その願いと同時に光る
一筋の閃光が宇宙の法則を破って、下から上へ走った
パンッと乾いた音が響き、それが花火だと気づく



「「ライトさん!」」
ベランダの下、携帯から聞こえる声と二重になって声がする

「ホープ!?」

「願い…叶いました?」
子供のような笑顔を向け、ホープは大きく手を振っている

「……あぁ、叶った」
ライトニングは急いでホープの元へ向かった








街が一望できる丘まで二人で歩く
公園のベンチに座り、空を見上げる

「どうしたんだ、急に」

「だって、こんな綺麗な星空の夜に…ライトさんと居ないなんて、もったいないです」

「そうか……、そうだな」


1時間前、最終の電車に乗って、ホープは走った
帰りの事なんて、考えてない
ライトニングに会いたい
ライトニングの隣で、この星空を一緒に見たい
単純明快、それでいいと思う







思っているのに行動できない、
過去の自分とは違うから

少しだけ、母親の顔が浮かんだ






「ここからの景色も…随分かわりましたね」
星に負けじと灯る夜景の光
灯りの数は復興の証

「そうだな…街も、人も変わっている」

「いいことですよ」

「そうか…じゃあ、お前に残念な知らせをやろう」
ライトニングは少し意地悪そうな顔をして
ホープの頭を撫でた

「な、なんですか?」











「私の気持ちは不変だ…」











あまりの嬉しさに、ホープは目を潤ませて
かみしめるかのように頷いた
「僕も……同じです」



こんな星の夜は
全てを投げ出したって
どうしても貴方に会いたいと思った

こんな星の夜は…



end


Reference tune/スターフィッシュ

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