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□No.13
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【No.13】


あの日はよく晴れて
夏の匂いがまだ残っていた


「いつでも、帰ってこい………お前のうちはここだ」


「ライトさん…僕…やっぱり」


「行け…」



列車のドアが閉じて、ゆっくりと動き始める
ライトニングはできるだけ笑顔で手を振った



その背中が見えなくなるまで
















「ライトさん、お話があります」

そう言われたのは昨夜の事
食事を終えてテレビを見ていると
ホープは改まった表情で目の前に膝を折った


何日も前から元気が無かったのは薄々感じていた


そこで告げられた事は
初出勤、午後一でグラン=パスルへと発つ事
いつ戻れるか分からない事

そして…

「さようなら…しましょう」
思い詰めた表情で、そう呟いた

テレビを消し、ライトニングは向き合った
「理由を聞こう」

「だって…いつ戻れるかわからないんですよ?1年?5年…もう、もどれないかもしれない」

「だから?」

「だから…僕のせいであなたを縛ることなんて、したくないんです」

「そう、か……お前がそう、したいなら…」

悲しみに浸りながらも
確かに、1年後、5年後…ホープを愛している保障は何処にもない
その不安はホープも同じなのだろう


「行ってこい…お前の夢が叶うんだろう?」



泣かないでくれ
期待してしまうだろう…




これが、最後の強がりだ……






















私は、ホープを止める事を諦めた
その代わり、彼を見守る事を決めた

私はここで待っている
お前は戻らないかもしれないけど













街に流れるニュースは連日ホープたちの事ばかりだ
コクーン市民にとって、まだまだ未知の世界であるグラン=パルスは注目の的だった
新たな資源の発見、生息する動物の生態、その研究論文がコクーンで伝えられている

時には事故の伝えも

「ま、まさか……大丈夫だよお姉ちゃん!!」
そのニュースを知り、隣でセラが言葉を詰まらせる


この思いも何度目か…
この手の不安に、幾度となく胸を痛めた


その度に、言い聞かせる
ホープなら大丈夫だ、と
たとえ、どんな困難があっても、乗り越えてみせる
そう信じている










ホープを送り出した季節を
何度繰り返しただろうか…







もう、もどれないかもしれない





あの時の言葉で目が覚める
天井を仰ぎ、次々と涙が溢れた

会いたい
声を聞きたい
触れたい
抱きしめたい



なんとか気持ちを落ち着かせ、セラの家に向かう支度をする
「今から向かう」とメールを打ち、扉を開いた


カギをかけ、歩き出す
その途中、後ろから声を掛けられた
ライトニングは振り向き、固まった

「ライトさん」

「ホー…プ」

「ライトさん」

2度目に名前を呼ばれた時には
既に走り出していた




なんで
どうして



それよりも、ただ1つ伝えたいことがあった


「愛している」

「僕もです…」

「もう二度と…こんな思いはごめんだ」

「待たせてしまって……ごめんなさい。でも、ありがとう……〈いつでも、帰ってこい〉と言ってくれて。ここが、僕の帰る場所だと言ってくれて」

「ホープ…」

「もう、離してくれと言われても…絶対に離しません」

キスをして、やっと笑顔が戻る
ホープのキスが唇から耳へ、耳から首筋に移動する


「ま、待て…外だぞ!」

「じゃあ、中に入れてください」

余裕のない声色で囁かれ
ライトニングの顔に一気に熱が宿る

一度中へ戻り、ホープが再びライトニングを抱きしめる


「ちょっと待て」

「ライト、さん?」

ライトニングは素早くメールを打ち、携帯をサイドテーブルに投げた






縺れ合いながらベッドに沈み見つめ合う

「おかえり、ホープ」

「ただいま」

また一つ、至福のキスをした


























「義姉さん何だって?」

「ん?〈少し遅れる〉だってさ♪」

「珍しいな」

「来たら理由聞かなきゃ!」











あのときと同じよく晴れた日で
夏の匂いがまだ残っていた





end



Reference tune/No. 13

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