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□低温火傷
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【低温火傷】





ホープのお陰で、楽しい夕食を終え
先に風呂を進める
風呂からあがったホープは、濡れた髪を乾かさないままこちらへやってくる

「風邪ひくぞ…」

「ひいたら、ライトさんに看病してもらいます」

「全く…」
呆れて息を吐き、ライトニングはバスタオルを奪う
少し強引にホープの手を引き
バスタオルを豪快に被せたかと思うと、ゴシゴシと音がしそうなほどタオルを動かす


「わっ!ライトさん!!」

驚きながらも、ホープは嬉しそうに笑い声をあげる

「へへへっ」

「何がおかしい」

「なんでもないです」


タオルから手を離し、ライトニングはシャワールームへ向かった

「あ…ホープ!冷蔵庫に冷やした果物が入っている。好きなのを食べればいい」

「ライトさんが上がるまで、待ってます!一緒に食べましょう?」

「…そうか、わかった」












湯船に浸かり、天井を仰ぐ
日々の疲れを取り去るように、湯を肩から腕へ滑らせる
自然と出る至福の声

「ふぅ…」

波立つ水面を眺め、ふとホープの顔が浮かぶ

もう時計は夜の11時をまわっている
明日は学校のはずだ…自分が上がるまで待たせているのは大丈夫だろうか?
と不安になる

いや、前も同じような時間帯に起きていたが
次の日はいつもの様に起きて支度を初めていた
15歳だ…そこまで子供ではないか

ホープは並の15歳に比べれば知識もあり、しっかりしている
言動もどこか大人びていて、あの旅で、驚くほど成長した
時々、本当に15歳かと疑いたいときがある


私が心配するまでもない…












「すまない…待たせ……ホープ?」

寝ている
テーブルに果物用のフォークを2本出し
握りしめたまま、テーブルに俯せるように寝ていた

「普通このままで寝るか?」
ライトニングは小さく吹き出し、起こさないようにフォークを取り置く


「眠るなら、ベッドへ行け…ホープ」

「ん……うん」

「立てるか?」

さすがに抱えては行けない
寝ぼけているホープをなんとか支え、ベッドへ寝かせた

果物を食べる夢でも見ているのか、口元をもごもごさせている
夢の中で食べることができたのか、子供らしい、屈託のない笑顔を浮かべる



「……ホープ」
呼び起こすわけではないけれど
静かにライトニングは呟いた

サラサラの髪の毛を解かすように頭を撫でる
自分と同じ匂いがする
そのことに、妙にドキリとしてしまう









「母、さん」









弱々しく掴まれた腕
ライトニングの胸がわずかに痛む



「行かない、で」



この寝言は珍しくはない
普段はその寂しさを見せないだけで、ホープは今でも母親を恋しく思っている
スノウへの復讐心は消えても、母を思う気持ちは一生のものだ



ライトニングはベッドに座り直し、ホープの手を握り返す


「あぁ、どこにも行かない」


その声に安心したのか、ホープはスヤスヤと寝息をたてた




母親代わり…なんて、大それた事を思ってはいない
ただ、ホープの支えの一つになれれば…
そう思っていた





なのに、寂しさを感じてしまったのは何故だ?

この寝言も、今まで何度も聞いたはずなのに…

今になって、少しずつ痛みを伴う





「私は…お前を一人には……」

ライトニングは、ときどき小さく握り返される手を見つめながら


しばらく寝付くことができなかった





end

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