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□フタリジカン
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【フタリジカン】



ライトさんへ
元気ですか?
僕は相変わらず元気です。



そこまで打って、ホープの手が止まる



本当は元気じゃない
もう、3週間…ライトさんの顔を見ていない
僕は学生で
ライトさんは軍人で
予想していたはずのすれ違いなのに
こんなにも辛いことだったなんて



会えない時はこうして日々の報告を一日の終わりにメールすることが日課となってしまったホープ
朝に送ったメールの返信が次の日の夜…なんて事は当たり前
ただ、そのメールの返信も先週から途絶えている


落ち込んでいても仕方ない
明日は花火大会だ
仕事を切り上げたら落ち合う約束はずっと昔にしている


「あ、そうだ」
思いついて、また手を動かす




昨日、ショッピングモールで綺麗な指輪を見つけました。
色も形も、ライトさんのイメージにぴったりで、とても綺麗でした。
買うことはできないけれど、お店で撮った画像を添付します。
明日、午後7時には会場に居ます。
ライトさんの仕事が終わり次第でいいので、連絡下さい。




最後に、昨日撮った画像を添付して、ホープは眠りについた








臨海都市一大イベントとあって、人は溢れかえっていた
人の波に身体をとられながらも、ホープはライトニングからの連絡を待ち続ける

自分の目の前を、手を繋いだカップルが何組も通り過ぎていく
羨ましいけど、きっとライトさんは恥ずかしがって繋いではくれないだろうか…そう予想して、小さく笑った




花火に祈れば願いは叶う




母さんの願いは叶わなかった…
僕の願いは…届くだろうか



「ライトさん…会いたい」












ふと、手に握っていた携帯のランプが点滅する
「ライトさん!!」

「ホープ、今、何処にいる?」

「えっと…東ゲート前の…ひなチョコボの屋台の横に居ます」

「東ゲート……居た。今向かう」

電話が切れた後、直ぐにライトニングは現れた
走ってきたのか、息がほんの少し上がっている


「すまない…待たせた」

「いえ…大丈夫です。お仕事、お疲れ様でした」

3週間ぶりのライトニングとの対面に、胸が詰まる
他愛のない話をしながら、花火を眺める
そんな何気ない事が幸せに感じられた



「昨日のメール、読んだぞ」
手袋を外しながら、ライトニングは続けた

「とても綺麗で…ライトさんに見せたくて」

「そうか。綺麗だったな…でも」

ポケットから何かを取り出し、ライトニングはそれを何も付けていない右手にはめる


「私はこれで十分だ」

「それ…」

今、ライトニングの右手で歪に光っているのは
自分がプレゼントした不格好な手作りの指輪だった


「ライト…さん」

素直に嬉しかった







「私は…お前に甘えてばかりだな」


「そんな!」


「そんな私が言うのもなんだが、たまには…」


「大丈夫です!!」
これ以上、ライトニングに負担をかけることなんてできない
そう感じたホープは声を張って答えた

だけど、心が追いつかない



「ホープ…」
なだめるような優しい声色


「私は…寂しかった」

「え…」

「お前は……違うのか?」
途端に、目頭が熱くなる
声に出せず、ホープはゆっくりと首を振った



背伸びをして、自分の気持ちを隠しているホープに気づき、ライトニングは優しく頭を撫でた


今からは、二人だけの時間


「ライトさん…僕は、会えない時は…少し辛いですけど。こうして一緒に居られる時間は、それをかき消すくらいに……とても幸せです」


「…私もだ」







引かれる手を握りかえし
未だ鳴り止まない花火に誓う




この手を、離さないと




end

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