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□ふいうち
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【ふいうち】




「ライトさん、遅いな…」
ライトニングの部屋の前で、ホープはしゃがみ込む

学校が終わると同時に走り出し、友達の間をすり抜けた
父さんにはちょっとウソをついて、「友達の家に寄って行く」と言った
今日はここへ来る日では無い
それはホープ自身も重々承知だった
それでもはやる気持ちを抑えきれず、ここまでやってきた

昨日の抜き打ちテストの点が良かった
多分、運気は上昇しているに違いない
今なら、何をしても成功しそうな気がする

一人、ニコニコしながら大好きな人の帰りを待つ











「ホープ?」

あれから待つこと3時間
ホープは肩を揺さぶられ、起こされた

「ふぁ、ライトさん!おかえりなさい!!」

「どうした?今日は…」

「はい、今日は…来る日じゃなかったんですけど……ライトさんに、その……会いた、くて」
照れくささから、声がしりすぼみになる

「寒かっただろう…」
ライトニングはドアを開けて、快く迎え入れてくれた


ホルスターを外し、ブレスエッヂが音を立ててベッドに沈む
着替えをキッチンで待つホープは、せっせとコーヒーの準備を始めた


「仕事、忙しいんですか?」

「あぁ、もうすぐ花火大会がある…警備配置やら新人指導やら…打ち合わせで、少しな」

「じゃあ、ライトさんは当日仕事、ですよね?」

「そうなるな」

その返事に、ホープはあからさまに肩を落とす

「警備は………交代制だ」
普段着に着替え終えたライトニングが咳払いをしながら現れる
毎年多くの観光客が訪れる催しだ、ずっと警備をしていろ、と、そこまで聖府も鬼ではない


「え…じゃぁ!!」
目を見開いて、コーヒーを持ったホープは駆け寄った


「ライトさんの仕事が終わったら、すぐに僕に連絡してください!絶対、絶対に!!」


「あぁ、分かった」
マグカップを受け取り、ホープの頭を優しく撫でた



「そうだ、先週、実習があって……」
鞄の中をあさり、小さな箱を取り出すホープ

ライトニングはテレビをつけて、ニュースに目を移す
「実習?」


「はい、ライトさんに、これを作りました」

そっと差し出された箱
開けてくれと言わんばかりの顔で見つめられ、マグカップを置きリボンに手をかけた
そっと蓋を開けると、そこには…



「なんだ…これは」


得体の知れない小さなモノが顔を出す
かろうじて、下から小さな輪っかが出ている事は分かった


「えっと……クリスタルの粒子から作りました」


いや、そういう事を聞いているのでは…
と心で呟き、飲み込んだ


「すみません…初めて作ったので、上手くいかなくて。でも、ライトさんには薔薇のイメージがぴったりだと思って」


これが薔薇か?
その思いも、今のホープを目の前にしてとても言えない
確かに、パールピンクの塊が、所々花びらを象るようにギザギザしていた

勉強や料理は得意なのに、こういう事は不器用なのか
ホープの新たな一面を知り、ライトニングは微笑んだ

「初めてにしては、よく出来てるじゃないか」


「指輪です!!受け取って下さい!!」


「指…」

輪?
なるほど…それで小さな輪っかがついているわけか


「いいのか?」


ホープは右手を取り、ライトニングの薬指に自作のリングを通す
「あ、…ちょっと大きかったですね」

「ホープ……ありがとう」

「……はいっ!!」

不格好な指輪を見つめ、ライトニングは胸を熱くさせる
忙しい仕事で、クタクタになっても、
ホープの笑顔を見ると、そんな疲れも吹っ飛んでしまうから不思議だ






この気持ちを…伝えたい




私は、お前のお陰で、こんなにも穏やかな気持ちになれるのだと…




立ち上がり、ホープの身体を引き寄せる

あっという間に、ライトニングに包まれて
それから優しく声が降ってくる


「ありがとう」


「はい」


突然の出来事に驚きながらも
今度はしっかり抱きしめかえした



end
 

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