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□大人の条件
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【大人の条件】




「そりゃー……その1、愛する人を守り抜く力があること、だろ!」
川に入り、水浴びをしているスノウは
ニッ。と振り向き答えた


「……ハァ」
得意気に答えるスノウを、ホープは羨ましく思うと同時に、その道はまだ遠いと自覚する


「どうした?」


「ううん。別に…」
自分にはもともとそんな力が無い
それに、ライトさんは強い…自分が居なくたって…


足下に転がる小石を拾い、川に向かって投げた


「義姉さん…か?」

驚いているホープを見て、スノウは微笑む
見透かされた事が恥ずかしかったのか、急に立ち上がり、その場を離れようとしていた


「ホープ、知ってるか〜?」


その声に、何が?と言わんばかりの顔で、ホープは振り向く


「俺が、義姉さんと初めて会った時…握手無視されたんだ」


それは今もあまり変わらないんじゃ…
ホープは、そう突っ込みたい気持ちを抑えてスノウの言葉を促す


「セラに手を出すな。もし出したら、手がでる…って、こう手の関節鳴らして」


その様子を容易に想像できて、ホープは軽く吹き出した


「それでも、スノウは引かなかったんでしょ?」


「まーな、へへっ」


そしてまたそれも、容易に想像できた





「でも、最近の義姉さん、柔らかくなったよな〜」
自前のバンダナを流水で洗いながら、スノウは言う
以前のライトニングはもっと自立心が高く、悪く言ってしまえば他人を頼らない、寄せ付けない雰囲気だった、と



「え?」



「いつからだろう………あぁ、そうか」
バンダナを力一杯絞り、皺を伸ばすように大きく拡げる
緩やかな風に揺れ、ぱたぱたとはためく音を鳴らす



「パルムポルムで会った時…からか」


「パルム、ポルム…」


「それから、ちょっとずつ、表情が豊かになった」

スノウの言葉に合わせて、ホープは旅のページの一枚一枚をめくるように
ライトニングの表情を思い出す


「ホープのお陰だろうな…」


「僕の?」

嬉しさと恥ずかしさがやってくる
ゆっくり、嬉しさが増していくのが分かった



「その2!」


「2?」
突然話が飛んで、一瞬理解が遅れる





「愛する人をの笑顔を絶やさないこと」

「うわっ、冷た」

その言葉と同時に、スノウの大きな手がホープの頭をグシャグシャ撫でた



「ホープ、お前が義姉さんの笑顔の理由になってやれ」


「スノウ…」


初めて、スノウを年上の大人だと感じた瞬間だったかもしれない



「お前ならできる…俺が保障する」


「スノウの保障って……」
あからさまに怪訝な顔をするホープ


「ホープ…このやろ!」
勢いよく腕を引かれ、あっというまに川に引きずられたホープ
二人でびしょ濡れになり、どちらからともなく笑いが溢れる



本当は信じている
そして、素直に嬉しかった









「何をやっている…お前達」

その声に振り返ると、呆れ顔のライトニングが立っていた


「ははっ、義姉さんも入る?」


「入るわけないだろ」


「で、でも…気持ちいいですよ!」
スノウ側に付いた誘いの言葉に、ライトニングは驚く
何か適当な事をホープに吹き込んだのでは、とスノウに視線をやる

スノウは知らんふりをして川から上がった



「…風邪でもひいてみろ。死ぬほど説教してやる」
怒りを含んだそれではなく、柔らかく、暖かい表情
軽く額を突いて、ライトニングは行ってしまった










僕は、成長できているだろうか








日ごと暖かくなる心を弾ませながら
去っていくライトニングの背中を見つめた





end

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