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□Brezza
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【Brezza】




「言ったじゃないですか…ライトさんを守る、って………大丈夫、ですか?怪我は……ない、ですか?」



溢れる血が止まらない
ヒューヒューと音をさせ、呼吸が細くなっていく

腹部を酷くえぐられたのか、血は留まる所をしらない
近づき跪く
生暖かい感触に、寒気がした


「ホー、プ」
わけが分からなくて、ホープの身体を揺する
なんで?
なんでこうなった?
今まで自分は何をしていた?
全く思い出せない…

「おい…、ホープ!!!!ふざけるな!!!!」
ライトニングは怒声を上げる

「義姉さん、もう…」
なだめるように肩を掴まれ、ライトニングは勢いよく払いのけた

「今、助けてやる…、からな」
バックパックからあるだけのポーションを取り出し、治癒術を唱え続ける

「ライト、さん……もう、僕は」


「私は許さないぞッ!!私を守るなら……生きて、みせ……」
ぐちゃぐやな感情のライトニングに、ホープは穏やかな表情を見せた


「ライトさん………」

ただ、名前を呼ばれただけなのに、こんなにも胸を締め付けられる
弱々しく差し出された手を、ライトニングは両手で強く握りしめた


「ライト…さ」

「ホープ…、ホープ…?」


私を置いていかないでくれ














ライトさん…


ライトさん










「ライトさん!?」

耳元で声がして、ハッとする
視界にはベースキャンプの焚き火の痕
一瞬、理解が追いつかず、無言で周りを見回した

なにもかわらない、グラン=パルスの広大な大地
緑の濃い匂い
もう、真上に近づいている太陽
温かく心地よい風

ホープの身体にグッと頭を寄せて
しばらくすると鼓動が聞こえてくる
少し速い、生きている証


「随分、うなされていました…恐い夢でもみましたか?」

優しい声

「ホープ…」

「はい、なんですか?」

「ホープ…」

「ライトさん?」

「ホー、プ」

「どうしたんですか?」


川のせせらぎと、鳥の声
穏やかな晴れの日


「風が…気持ちいい」
じっとりと嫌な汗を乾かすように、爽やかな風が吹き抜けていく

「そうですね。…今日はみんな、滝壺の方で遊んでいると思います」

「そうか…」
ライトニングはゆっくりと身体を起こし、立ち上がる

「ライトさん、山麓の道を抜けた先に、とても景色の綺麗な場所を見つけたんです。えっと…気分転換に見に行きませんか?」
振り返ると、好奇心を漂わせる表情でその方向を指差していた
その姿があまりにも可愛らしく、ライトニングは小さく吹き出し、行ってみよう、と歩き出す


「待って下さい、ライトさん!僕が先行して案内します!」

ライトニングを庇うように、やや前方へ陣取るホープ
その光景に、嫌な事を思い出し、思わず追いかけホープの肩を取る


「どうしたんですか?」


「私を置いて………行くな」


暫く無言でいると、ホープはライトニングの手を取って歩き始めた


「これなら、大丈夫です」

「ホープ…」

「これなら…絶対にライトさんを置いていったり、しません…。約束です」
不自然な声の詰まりに視線をやると、ホープの耳は真っ赤に染まっていた


「あぁ、約束だ…」


「はいっ!」


共に歩き出し
花の香りを運ぶ風が吹く頃
ライトニングの不安は消えていた



end
 

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