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□男として
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【男として】
グラン=パルスに来てから、
木の実集めと薪集めは僕の仕事になった。
「ホープ、貸してみ」
そういって、スノウは軽々と持ち上げる。
ホープがやっとの思いで持ち上げる薪を、片手でひょいと担ぎ、サクサク歩き出す。
山麓の道を歩き、スノウの後を追う。
大きな背中だ。
自分とは比べものにならないほど…。
「ただいまもどりました!」
大量の薪を担いでいたスノウを見るなり、ライトニングは呟く。
「力仕事だけは役に立つな、スノウは…」
「義姉さん!それひどいって」
「最高のホメ言葉じゃねーか。頼りにしてんだよ、な?」
ファングは笑ってスノウの背中をバシバシ叩く。
「そうそう、助かるよ〜」
ヴァニラも続いて背中を叩く。
「うっし!!」
「…たっく。……ホープ?」
ぼーっとしているホープに声を掛けるライトニング。
「あ、水を汲みに行ってきます」
「私も行こう」
「ぼ、僕一人で大丈夫です!」
「…………そうか」
少し強めに言われ、ライトニングはきょとんとしながらホープを見送った。
「僕だって、一人でできる。ライトさんの頼りになりたい…」
呪文の様に呟きながら、湧き水を汲む。
「スノウ、ホープに何か言ったか?」
「いや…特に。なんで?」
「ホープの様子がおかしい」
理由が分からない2人は揃ってう〜ん、とうなる。
「姉ちゃん、たまにはボウズを頼ってやれよ」
一部始終を離れて見ていたサッズが口を開く。
「どういう意味だ?ホープはまだ子供だぞ、無理をさせる訳には」
「そりゃ、俺たち大人が守ってやるのは大前提さ。だけどよ…守られているだけの存在って知ったら、アイツはどう思う?」
「…………難しい年頃だな」
「アイツも、立派な男さ。たまには頼ってもいいと思うぜ」
ひなチョコボも同調するように、サッズの頭の上でピーピー鳴いている。
✳︎
「ホープ」
「はい…」
夜の見張り。
焚き火を絶やさぬよう、ライトニングとホープは起きていた。
「眠いなら、寝てもいいぞ」
先ほどからうとうとしているホープに声を掛ける。
「すみません、大丈夫です」
「無理をするな…」
「大丈夫です…ちょっと考え事…していて」
「見張りなら私一人で…」
ホープはハッと顔を上げ、険しい表情を見せる。
「僕は…そんなに頼りないですか?」
「……そんなことはない」
ライトニングはサッズの言葉を思い出す。
「スノウみたいに力も無いし、体力も無いし…」
「お前はスノウみたいになりたいのか?…やめておけ、バカはひとりで十分だ」
「僕は、何も……足を引っ張ってばかりで」
思い詰めた表情に、ライトニングは優しく肩を寄せた。
「自意識過剰だ…誰もそんな風に思ってない。私の言うことが信じられないか?」
「ごめんなさい…」
「ホープ…私は少し疲れた。少しだけ、肩を貸してくれないか?」
「え…」
返事も聞かず、ライトニングはホープの肩に頭を預ける。
「ライト、さん…?」
今まで、一度も見た事がなかったライトニングの寝顔が、すぐ側にある。
「こういう事は、ホープにしか頼めないだろう?」
「あ、安心して寝て下さい。僕が、見ていますから」
「あぁ、頼んだぞ」
「はいっ!!」
一人の仲間として、男として、ライトニングに頼られる事が、こんなにも嬉しいことだと。
ホープは改めて実感した。
寝返りで崩れそうになるライトニングをしっかり腕で支え、更ける夜空を仰ぐ。
このまま朝が来なければいいな。と
くだらない事を小さく願ってみた。
end