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□追いつきたい
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【追いつきたい】
「あの…ライトさん」
「なんだ」
先ほどから落ち着きがなく、立ったり座ったりを繰り返すライトニング。
「少し、落ち着いて下さい」
「な…、分かっている…、わかっているが…」
その気持ちは分からないでもない。
今日は特別な日。
ノラが経営する海の家で、パーティーが開かれる。
招待されたホープは、生まれて初めて正装というものをした。
「さ〜て、みなさん!今日の主役たちだよ!」
レブロの声が通る。
その声に、ライトニングの動きがピタリと止まり、
そわそわしていた態度を改めた。
視線の先には純白のワンピースに身を包んだセラと、
何故か真っ白なバーテン服を着ているスノウ。
おめでとう。の祝福の嵐のなかをくぐって、おそろいのネックレスを揺らしながら。
2人はやがてライトニングとホープの前にやってきた。
「お姉ちゃん」
「義姉さん」
「おめでとう…セラ。…スノウ、その格好はどうにもならなかったのか?」
「…白い服を探したんだけど、これしか無くって」
ニッ。と白い歯を見せて笑うスノウ。
「お前…」
呆れて、それ以上突っ込むことを辞めたライトニング。
✳︎
「幸せそうですね…2人とも」
桟橋に佇んでいたライトニングに気づき、ホープはそっと近づいて声を掛けた。
「そうじゃなきゃ、……私が、許さない」
ライトニングは振り向かず、ぽつりと呟く。
刻々と色を濃くしていく夕焼けを見つめ小さく微笑んだ。
「ライト…さん?」
「セラを守れる大人になりたいと願って今まで過ごしてきた……もうその役目も終わりだな。セラにはスノウが居てくれる…」
「なら…。『僕を守る』って、言ってくれました」
「お前は優しいな」
ライトニングは、背中に小さな重さを感じて少しだけ振り返る。
ホープの頭が背中に寄りかかっている。
「早くライトさんに追いつきたい」
「ホープ?」
「あの時は、ライトさんの背中を追って…置いて行かれないように必死でした」
そうだったな。と
懐かしむように、ライトニングは微笑んだ。
「でも。も…もし僕が……いつか、」
言葉の続きが気になって、ライトニングは振り返る
ホープの髪が夕日を浴びて燃えているように熱く見えた
少し潤んでいる瞳
「ライトさんに追いつけたら…その時は」
今、しっかりと目を見据えて、
成長した眼差しに、ライトニングはドキリとした。
「ライトさんに、伝えたい事があります…」
言葉が途切れると、波音がいっそう響く。
「だから、それまで僕のこと、見守っていてくれませんか?」
「…わかった。楽しみにしている」
不思議と暖かい気持ちに包まれて。
ライトニングはホープの頭を優しく撫でる。
ホープは顔を真っ赤に染めて、大人しくそして嬉しそうに撫でられた。
「おーーーーい義姉さーーーーん!!ホープーーーーー!!みんなで写真撮るぞ!!早く!!!」
スノウの声がして、ライトニングは軽やかに走り出す。
「ホープ!行くぞ!」
「はい!!」
ライトニングの差し出した手を、ホープが掴む。
いつか、この手を…
自分が引いてみせる。
そう胸に誓って、走り出した。
end