13vol.2

□始まりはいつも
1ページ/1ページ

【始まりはいつも】


「先日もお話した通り。柱はあくまで経路の目安だと考えてください。エレベータ自体は自立させます。降下動力の際に発生する摩擦をエネルギーに変え、上昇時の動力をまかないます。これが実現すれば…」

AF2年。
僕は今、この才を試されている。
そしてそれは同時に、己が進むべき道をも。









──元気でな。

──…はい。

──そんな悲しそうな顔するな。

──…でも

──一生会えないわけじゃない。生きているんだ……また会えるさ。

──…………はっ、ぃ。絶対、です。

堪えていたはずの涙があふれ出す。
あの旅から数日後。
父さんと再会した僕は、コクーンに戻る事となった。
その見送りに駆けつけたライトさんが、伝う涙を拭っくれる。
僕は、崩壊を免れた半分の土地に住まう父さんの知人に世話になることになり、グラン=パルスを旅立つ。

ライトさんたちのように、家族以外で頼る人が居ない人たちは、新天地を求めグラン=パルスへと降り立ち、新たな土地で生活を始めていた。

本当は嫌だった。
ライトさんと離れる事も嫌だったけど……スノウやサッズさんとの別れも惜しく感じていた僕は重症だと思った。
やっぱり僕はまだまだ子供で、大人の力を無くしては生きられない。
元の生活に戻るとはそういうこと。



ライフラインが修復・復旧したのは、それから2ヶ月後だ。


〈……リグディに融通を利かしてもらったんだ。元気か?ホープ〉

「…はい!!!ライトさん!お久しぶりです!」


今までの時間を埋めるように、僕はたくさんの事を話した。
それを、うんうんと相づちを打ちながら静かに聞いてくれるライトさん。
ただの電話なのに…こんなに嬉しいなんて。
気づかなかった。

気づいてしまった…。

だから、切り際に〈元気そうで良かった〉と言われた時。
とてつもない悲しさに襲われたんだ。

会いたい…。
会いたいです…。
この気持ち……伝えても、いいのかな?
迷惑、じゃないかな?
そう考えて、結局言えなくなる。


〈また暇をみてかける…じゃあ、おやすみ〉

「はい、おやすみなさい…」



そしてまた元の生活が戻ってくる。
もう、会えないのかもしれない。
あきらめるしかないのかな…
簡単に解決できる問題じゃない。


「父さん…、あの…さ。グラン=パルスの事だけど……」

「確認してきたが……臨時政府に申請して、その書類が受理されないと、あちらには行けないようだ。」


気軽に行ける場所じゃないことは分かっていた。
大規模な移動手段が見込めない今、親族と離ればなれになってしまった人から優先的に移動申請が提出できる。
それが受理され、細かくスケジュールが組まれ、決まった日時に大型輸送機で移動する。


「だよ…ね」


きっと、このことはライトさんだって知ってる。
僕の悩みは壮大なのに、ライトさんとの週に1回の電話で、
想いは確実に膨らんでいく。
〈声だけじゃなくて…お前の元気な顔が見たいよ〉
さりげない言葉に、泣きそうになる。
あの先の雲を越えて……ライトさんに会えたらいいのに。
考え始めると果てのない想いがこみ上げる。
見つめる太陽のその向に……輝く笑顔の貴方が居るのに。









ライトさん……会いたいです。
そう願って、何度季節が変わっただろうか。


「これが実現すれば…、輸送コストの大幅削減が可能になり、移動の受け入れ体制も格段に上がります。こちらが大まかな設計図です。」


でも、変わったのは季節だけじゃない。
僕は、前に進むことにした。


「グラン=エレベータ計画。完成目標は…いえ、完成はAF4年。」


新たな挑戦といいながら、本当の理由は“ライトさん”って知ったら…
笑われてしまうかな…。









〈もしもし?ホープか〉

「ライトさん、デートしません?」

〈デート?唐突だな〉

「2年後…必ず。」

〈2年後?…随分先だな。憶えておくよ〉

「……会いたい。ライトさんに」

〈……………私も…、同じだ。ホープ〉




それでも、僕の道はいつでも貴方に繋がると信じたいから。
想いを繋ぐ道を歩みます。



end

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ