何だかんだ言ってもやっぱり、とっつぁんは有能な警部だと思うよオレは。

息を切らしながらルパンがそんな事を呟いたのは、朝日が眩しく入ってくるアジトでのことだった。
しかし同室にいる仲間二人から返事が返ってくることは無く、アジトに聞こえるのは荒い息づかいのみ。そもそもマラソン選手でもないのに、数時間走り続けた彼らは声を発するのも億劫な状態だった。
次元はソファに倒れ込み、五右ェ門も珍しく机に突っ伏している。ルパンに至ってはフローリングの上に直に横たわっていた。あー床って冷たくて気持ち良いね、と火照った顔をフローリングに押し付け始める。
そんなルパンをチラリとも見ないで次元がやっと言葉を発した。

「朝日で目が潰れそうだ……いや、その前に体が蒸発する」

だから何だとルパンがソファに倒れている次元を見上げれば、アゴで窓を指された。ボルサリーノを被せて顔すら見えない。
……オレだって動きたくないくらい疲れているんですけども。
ルパンは次元の態度に釈然としなかったが、自分も体に浴びる朝日が痛くてしょうがないので仕方なく冷たいフローリングからしぶしぶと顔を離した。

「…うっ……!!」

ソファの影から身を出せば、予想以上の光が目に入って思わずたじろぐ。三日完徹の眼球には朝日は激物なようだ。
目がー!目がー!!とどこぞの大佐のように叫びながらルパンは床で悶えた。その耳にシャッとカーテンが閉められた音が入ってきたかと思うと、部屋は薄暗くなった。

「風呂に入って拙者は寝る」

いつの間に起き上がったのか、目の下に黒々と隈を作った五右ェ門がカーテンを閉めていた。一言そう言い残すと、五右ェ門はさっさとバスルームへと行ってしまった。その背中に、いってらっしゃ〜いと間の抜けたルパンの声が追う。いつもの五右ェ門なら、疲れているのに洋式の風呂なんかに入れるか!とさっさと温泉にでも行きそうなものだが、今はそこまでする元気もないらしい。

「……でもさぁ…」

再びフローリングに顔を付けてルパンは口を開いた。次元は聞いているのかいないのか、ぴくりとも動かない。かまわずルパンは続ける。

「元はと言えば、五右ェ門が原因だよね。こんなに疲れたのって」

「徹夜はてめぇのせいだろうが」

超長距離マラソンはともかく。
全てを侍のせいにしようとする相棒にとりあえず次元はつっこんだが、ルパンは気にしてない風だった。

「目当てのお宝が砂漠のど真ん中に有っちゃあ、途中までは車で行けても、そのまま警備の中につっこむのは無理なんだからしょうがないでしょーが」

「…だからってあの距離を歩いて行くか、普通……」

次元の言い分は尤もで、三人は一日半もの時間、炎天下の砂漠を休まず歩き続けたのだ。地元の人間ならまだしも、むしろ都会育ちの次元には正に苦行だった。何でわざわざ砂漠なのかというと、エジプトで見つかった宝石なのだから、近くに展示していた方が見栄えが良くなるはずというのが所有者の考えだったらしい。
更に悪いことに、記者として潜り込んだ三人に出された料理は洋食のフルコース。ご馳走に一瞬目を輝かせたが、すぐにヤバイんじゃないかと顔を見合わせたルパンと次元の目の前で、何の嫌がらせか、ケチャップが並々と料理にかけられた。
それに我慢ならなかったのが五右ェ門である。疲れて怒りの沸点が下がっていたのも手伝って、二人が止める間も無くテーブルは真っ二つとなっていた。
記者がいきなり刀を奮って、当たり前だが展示室は騒然となった。警備員が雪崩れ込んでくる中、ゆっくりしている時間なんて無く。チクショウ、強行突破!!と記者の服を脱ぎ捨て、宝を手に逃げようとした三人の目の前に飛び出てきたのは銭形警部だった。

「ルパァーン、貴様ならここに来ると睨んどったわ!…じゃねぇよ!!」

思い出して腹が立ってきたのか、ルパンは拳を床に叩きつけた。

「どんだけよ…とっつぁんってばもうストーカーの域にいっちゃってるんじゃないの……?」

「……否定はしねぇよ」

「してちょうだいよ、ソコは」

ルパンはがっくりとうなだれたが、すぐにパッと顔を上げた。その表情はとても輝いていて。次元は思わず顔をしかめた。
また何か下らないことでも考えているのか。
次元の心配など知る由もなく、先程まで憔悴していたのが嘘のようにルパンは勢い良く立ち上がった。

「今回の失敗は、要するに五右ェ門の好き嫌いなせいな訳じゃん?」

「……で?」


「五右ェ門ちゃんのケチャップ嫌いを素敵な料理で直してあげちゃおう大作戦!!」


オレってば何て坊や想いなんでしょ!
なんてことを言いながら、ルパンはさっそく鍋の用意を始めた。鼻歌まで歌って上機嫌である。
しかし、冷蔵庫からトマトケチャップを取り出し、鍋へと豪快にブニュ〜と入れ出したのを見て、次元は取り敢えず関わるのをやめた。
容器に入っていたケチャップを全て入れ終えると、ルパンは鍋に火をつけた。どうやらトマトケチャップをベースにしたオリジナルのソースを作るつもりらしい。思ったよりちゃんと作るのかと関心した次元だったが、次にルパンが冷蔵庫から取り出したものに言葉を失った。

「やっぱり嫌いなものを克服するにはチョット工夫して、好物も混ぜなきゃね!」

手にしたものを何の躊躇いもなくルパンは鍋へと入れた。途端に何とも言えない異臭が発生した。


バスルームから出たとたんに漂ってきた異臭に五右ェ門は首をかしげた。異臭に混じって仄かに自分の良く知る匂いもする気がする。
まさか…と急いでリビングの台所へと行くと、エプロン姿のルパンの背が見えた。手には、先日に外国であるここから苦労して見つけ出した高級納豆……の空の容器。更にその横には日本からわざわざ持ってきた自前の味噌。極めつけはグツグツと音をたて異臭を放っている鍋。
何でこんな状況になったかはサッパリな五右ェ門だったが、大事に食べようとしていた納豆と味噌が失われたということだけは理解できた。静かな怒りが沸いてきて、五右ェ門は黙ったままスッと刀を抜いた。




2.に召すまで後三秒




町外れのアジトにルパンの悲鳴が響いたのは、次元がこっそりとリビングを抜け出してから3秒後のことだった。



















……長いわ!

と小さくつっこんでみる←
通学の電車でポチポチやってたからまとまりが無いですね(´・ω・`)
やっぱりネタが不完全燃焼…。

そして良く考えたら外国って家の中も外履き履いてますよね。
ルパンきったねぇ!(笑)←←←


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