Novel
□美女と宝石と5
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「五右ェ門!!五右ェ門!?返事しろ!!」
ルパンは必死に無線に声をかけた。
無線から銃声が聞こえた後、五右ェ門からの通信が切れた。それが何を意味するのか嫌でもわかる。
「くそっ!」
無線を次元に切り替える。
「次元!部屋に入るな!!」
次元はドアに伸ばした手を止めた。
「何だ?」
ルパンの声にいつもの余裕がないのを次元は疑問に思った。お宝はすぐソコだというのに。
『五右ェ門から連絡が入った。20階は罠だとよ』
「罠があるのはわかりきって……五右ェ門は?」
『……おそらく捕まった…』
次元はチッと舌打ちをした。
つまり20階に罠が仕掛けてあるのではなく、20階自体がダミーなのだ。警備が手薄なのも納得がいく。
「…どうする?」
『とにかく五右ェ門が先だ。お宝の場所は多分五右ェ門が知ってるだろうし。こっち戻ってこれるか?』
次元があぁ、と答える前に下からのライトが次元を照らした。
「誰だ!そこにいるのは!!」
「やべっ」
五右ェ門が捕まった事で様子を見に来たのだろう。男が数人階段を上がってくる。
次元は腰のマグナムに手をやった。
『次元、どうした!?』
「悪いがそっちに行くのに少しかかりそうだぜ!」
自分を照らしているライトを撃ち抜くと、続けざまに次元は頭上の明かりも撃ち壊した。次元の姿が闇に紛れる。男達は怯んだ。
下の階の明かりはついたままだったので次元には男達の動きがよく見えた。すかさず男達の持っている銃を撃ってはじき、張り付きグローブで階段の下に回った。
「野郎!どこへ消えやがった!!」
おーおー、ガラの悪いことで。
男達が頭上で吼えるのを聞き、次元は肩をすくめた。
そのまま下の階へ着地し、足音を出さないように階段を下る。
やっぱりおかしい。
ルパンは違和感を拭いきれないでいた。
この会社の社長がドラッグを売りさばいているのは知っていたが、ここまで頭の切れる奴だったか。1日だけだが調べた限りではそんな感じではなかった。頭の悪い人間をカモにしているセコい子悪党。ルパンの印象はそんなものだった。
誰か入れ知恵してやがるな…。
20階の宝物庫のダミーも、この対応の早さも。
それでもこの様子だと次元は逃げ切れるだろう。ルパンは急いで部屋を出る準備を始めた。誰かがココにくるのも時間の問題である。
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