Novel
□美女と宝石と4
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コツ…
コツ…
頭の上の足音が次第に遠ざかる。
早く行ってくれ…!
次元は痺れてきた腕に舌打ちした。ここで落ちたら計画どころか人生もパァである。
現在の階は14階。監視カメラの死角を突いていくのは想像以上に大変だった。ここまで必死に上ってきた次元は息を切らせていた。
(…タバコの本数減らすか…)
そんな事を考えるも、一方で早く吸いたいと思う辺りすでにもう無理そうだ。
ふと、次元は手すりに手をやって階下を見た。階段はビルの外見に似合わずふきっ晒しの螺旋階段となっている。明かりが暗い階段では、もう1階の方は真っ暗で何も見えなかった。
ぶるっと身震いをして、次元はまた階段を上ろうとした。そこで無線からルパンの「あ」という間抜けな声が聞こえた。
『あらら。前から見回りが来るぜ』
「何ぃ!!?」
来ると言ってもココは隠れる所なんてない階段。ルパンが何も言わないので、見回りなんて無いのかと次元は思っていた。場違いなノンキなルパンの声に小声で怒鳴った。
「どぉすんだよ!こんな所で見つかったら全部仕舞いじゃねぇか!!」
『おーちつけよ、次元。ポッケの中見てみ?』
次元がポケットに手を入れると、いつの間に入れられたのか、いつもの張り付きグローブが入っていた。
そんな訳で次元はかれこれ5分ほど階段の裏でぶら下がって踏ん張っていた。
もっとマシな計画は無かったのか。
次元はパソコンの前に座っているだろう相棒の顔を思い浮かべて歯を食いしばった。上の足音が聞こえなくなったので、急いで上へよじ登る。
「……ルパン」
『何?』
暗い次元の声色にルパンが不思議そうに返事をした。さすがに疲れたのかな?とルパンが思うも、次元の口元はつりあがっていた。
「…オレは決めたぞ」
そう呟いて、次元は痺れた腕をさすりながら心に誓った。
終わったら取りあえずあの猿顔おもいっきりぶん殴ってやる。
目的の20階まであと6階。
誓いを胸に次元は再び階段を上り始めた。
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