Novel

□美女と宝石と2
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街中の一際高いビルの前に黒い車が止まった。運転席からタキシードを着た男が出てくる。男は後部座席のドアを静かに開け、手を取って中にいた女性を連れ出した。

「白羽様ですね。お待ちしておりました。」

ボーイらしき人が頭を下げる。そして女性を見て息を飲んだ。その女性の凛とした美しい姿に見とれたのだ。

白羽家の家長は変わり者で、しかし美術品には目がない年寄りだとか。噂だけが飛び交い、その姿を実際に見たと言う人はいないらしい。その孫もしかり。

見とれていたボーイは自分の仕事を思い出し、慌てて言った。

「そ、それではお荷物をお預かり致します。」

「ん。」

タキシードの男は車の後ろから大きめのカバンを取り出してボーイに渡した。
ボーイが受け取ってカバンの重さにふらつく。
それを見て、男はニヤつきながら言った。

「中身はお嬢様の大事なものなんでね。丁重にお願いしますよ。」

「…か、かしこまりました。お部屋の方に置かせて頂きます。」

「それでは、こちらにどうぞ。まもなく社長がお見えになります。」

別のボーイが二人をビルへ促した。
男はチラリと女性を見たが、女性は軽くうなずいただけでニコリともしない。
やれやれと男は軽くため息をつき、そして二人はビルの中へと入って行った。


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