Novel

□美女と宝石と5
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今までの苦労は何だったんだ。
上がってきた階段を下りながら次元はやけくそになりそうになっていた。明日は絶対筋肉痛に悩まされることだろう。
上の階では未だに男達が喚いていた。どうやら1階1階調べているようだ。

「ご苦労さん」

次元は呟いて1階のドアを開けようとした。



「そこまでだ」



低い声が次元の背中を突き刺した。
ゆっくりと顔を後ろに向けると暗がりに男が一人、拳銃を向けて立っていた。

「……驚いたな。」

気配を全く感じなかった。少し油断していたのもあるだろうが、次元は不覚を取ったことに自分に腹が立った。

「上の連中と随分感じが違うじゃねぇか」

「余計な事はしゃべらなくて良い」

軽口を叩く次元に男、グレンは冷たく言った。
次元は持っている銃を握り締めた。早撃ちならこちらに分がある。振り向いて、グレンを撃とうとした。

「あまり妙な動きをしない方が良いですよ。女がどうなっても良いなら別ですが」

「!」

次元の腕がグレンの眉間にマグナムを合わせた状態で止まる。
女ってのは五右ェ門のことか。まだ正体はバレていないようだ。
上から男達の足音が近づいてくる。どうやら次元が1階にいることに気づいたようだった。
次元は腕を下ろし、銃をグレンの足元に投げた。グレンはそれを拾うと自分の腰に仕舞った。
降りてきた男達が次元を取り囲む。かまわず次元はグレンを殺気のこもった目付きで睨んだが、周りの男達が怯んだだけでグレンは表情を変えなかった。

「それではついてきてもらいましょうか」

グレンは次元に背を向けて歩きだした。次元は無言で帽子を深く被りなおした。




「…帽子の無線機には気づいてねぇみたいだな…」

ルパンはほぅとため息をついた。耳にはイヤホン。無論、次元の帽子と繋がっている。

「う〜…しかし外はさみぃな…!!」

冷たい風にぶるっと身震いすると今までいた部屋の様子を窓の外から覗き見た。明らかに堅気で無い男達が部屋の中を粗捜ししていた。
荷物の片付けを終えて部屋を出ようとしたルパンだったが、廊下から数人の足音がしてので慌てて窓から外へ出て隠れたのだ。現在ワイヤーを上の階の窓にひっかけてぶら下がっている状態である。

「二人してとっつかまりやがってよー。……何だぁ?」

ワイヤーをつたい、上へ登っていくと誰かの声が微かに聞こえた。ルパンが声の聞こえてくる方を見ると、排気口らしきものがむき出しなっていた。大人一人ギリギリ入れる大きさの穴となっていた。



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