20131013

「琥太郎さん、遅いなあ…」

琥太郎さんと結婚して数ヶ月。
明日は結婚して初めて祝う琥太郎さんの誕生日なんだけど…

「お仕事長引いてるのかな…」
ここの所琥太郎さんは仕事が忙しく帰りが遅い日が続いていた。それでなかなか一緒に過ごせる時間がなく、今朝見送る時に『寂しい』と言ったら

「…ごめんな、なかなか一緒にいてやれなくて。もう少しだから、落ち着いたら二人でどこか出かけような」

と慰めてくれたけど…

本当は私の方が琥太郎さんを慰めなきゃいけないのに

「琥太郎さん、無茶してないかな…?」

と慰める所か逆に心配になってしまう

琥太郎さんは私の為ならきっと無茶する。無茶し過ぎないように支えるのが妻である私の役目なんだけど…

「これじゃあ奥さん失格だよ…」

そう、私はあんまり琥太郎さんを支えられていない。この前だって熱を出した時も私は気づかなかった

「どうすれば上手く支えられるのかな…」

そう考えてながら私はいつの間にか眠りに落ちていた


…あれ、私いつの間に寝ちゃってたの?

ガチャ

今ドアが開く音がしたよね?

「…帰ってきた?」

時計を見ると日付が変わる5分前になっていた

私は急いで玄関に向かう

「琥太郎さん!」

「ただいま。遅くなってごめんな…」

「いいえ、大丈夫です。おかえりなさい」

「っ…」

そう言った途端、琥太郎さんはいきなり私を抱きしめた

「こっ琥太郎さん…?」

「嘘を言うな…本当は大丈夫じゃないだろう」

「えっ…」

「顔に涙の跡がある。さっきまで泣いてたんじゃないのか」

「えっ」

言われて顔に触れると、少しだけど涙の跡があった。泣きながら寝たつもりはなかったんだけど、琥太郎さんにはわかっちゃったのかな

「そんなに寂しかったのか?」

「……はい」

ここでごまかしても意味がないので、私は素直に自分の気持ちを告げた

「そうか…お前は口では大丈夫って言っても顔をみたら全然大丈夫じゃなさそうだからな。無理して笑わなくてもいいのに」

「でも琥太郎さんは笑って出迎えてくれた方がいいでしょう?」

「まあ、そうだな。でも無理して笑われるのは見ていて辛い。だから辛い時は無理しないでお前の気持ちを打ち明けてほしい」

「はい…」

「って、辛い思いをさせてる俺が言えることじゃないけどな」
琥太郎さんはそういって目をふせる
「…寂しかったのは本当です。けど同時に不安にもなったんです」

「不安?」

「私は琥太郎さんをちゃんと支えられてるのかなって…前熱を出した時も気づいてあげられなかったから。奥さんとしてすぐに気づくべきだったのに…これじゃあ奥さん失格ですよね」

そういうと琥太郎さんはいきなり私の鼻ときゅっと摘んだ

「いたっ…何するんですか!?」

「あのなあ…俺がお前に支えられてないなんて一言も言ったか?俺はお前がいるだけで充分支えになってるよ」

「えっ?」

私がいるだけで…?

「家で月子が待っててくれる…月子の笑顔を見られるなら俺は仕事を頑張れる。お前の存在は俺にとって大切で、かけがえのないものなんだ」

「本当ですか?」

「俺が嘘を言ってる様に見えるか?」

「いいえ」

「ならいい。それに支えが足りないと思うなら、少しずつ努力していけばいい。お前は俺の大切な奥さんなんだからな」

"大切な奥さん"

そう言われたのが嬉しくて私は涙が出てきた


「おいおい…また泣いてるのか?」

「違います。これは嬉し涙なんです」

「そうか…でも今は頼む、笑ってくれないか」

「はい」

私は涙を拭い、精一杯の笑顔を琥太郎さんに向けた。つられて琥太郎さんも笑顔になる

「そうだ…琥太郎さん今何時ですか?」

「今?23時59分だが…」

「じゃあもう少しですね」

「?何がだ」

訳がわからなくて首を傾げる琥太郎さん

「今から私が言うことちゃんと聞いてて下さい」

琥太郎さんの頬に手を添えて私は告げた

「結婚するまで私達の間にはいろいろあったけど、今は琥太郎さんと結婚できてすごく幸せです。これからもずっと一緒に笑いあっていけたらなって…心からそう思います」

「月子…」

少し泣きそうな顔で微笑む琥太郎さん

私は恥ずかしかったけど、言いたかった一言を呟いた

「琥太郎さん、誕生日おめでとうございます」

そう告げて琥太郎さんにキスをした

琥太郎さんは驚いた顔をしたけど…

「ああ、ありがとな。俺もお前とずっと一緒に笑いあっていたい。これからもよろしくな」

「はい!」

そう告げて私達はもう一度キスを交わした

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