*

□少し照れた背中
1ページ/1ページ


“今からそっち行くから腹括りなせェ”


死刑宣告という名のメールが届いた数秒後、我が家のチャイムが鳴り響いたのでした。

「こ、こんばんは」
「こんばんはァ、何か言うことはねぇんですかィ?」
「すいませんすいませんごめんなさい誕生日すっかり忘れてました」
「許さねェ」


必死に頭を下げた私を軽く受け流して、ドS星の王子様はずかずかとリビングのソファーで寛ぎ始めた。

「で、愛する彼氏が記念すべき誕生日を迎えたっていうのにプレゼントは無しですかィ」
「彼氏じゃない、ちょ、睨まないでください!いえ、あのですね、時間がなくて…」
「時間がなくて?」
「お、お金もなくて…」
「お金もなくて?」


ソファーに寛いでいる沖田さんと床に正座している私。
私が部屋の主なのにおかしいな。

「精一杯考えてでた結果がこれでして…」


ない頭(正確に言うと恐怖で何も考えられなくなった頭、だ)で考えた結果を差し出す。

「か、肩たたき券…あべしっ」
「俺はお父さんですかィ」
「いえ、本当に申し訳ない、ちょ、クッションで叩かないで…!」


やっぱり駄目だったらしい。結局肩たたき券しか頭に浮かばなかったのだからしょうがない。
これでもまだよく考えた方だ。


「しょうがねェ、明日一日開けときなせェ」
「え、明日もバイト…」
「口答えできるんですかィ?」
「速やかに休ませていただきます」
「じゃあまた明日」
「あ、はい、では」


やっと、というか強制的に明日パシりになることで死亡フラグは消えたらしい。
安心しながら玄関で靴を履く沖田さんの背中を見ながら大切なことを言っていなかったことを思い出した。


「お、沖田さん!」
「あ?」
「誕生日おめでとうございます!」


そう大声で言うと沖田さんは少しだけ目を見開き、背を向けて手をひらひらさせてから帰って行った。






背中

(扉が閉まる寸前、少し赤い耳が見えた)
(明日を少し楽しみにしている自分がいる)


----------------
ギ リ ギ リ !
そごさん、すきだ…!
\(^O^)/←燃えつきた

*090708

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ