過去・拍手・その1

□08年10月31日までの拍手
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白馬を見つけた。
薄汚い部屋の中央で、虚ろな目をして座っていた。
肌は死んでいるのかと思うほどの色をしていて。
「はくば」
声を掛けてもなんの反応もない。
そっと頬に手をやると、わずかに体を揺らした。
「はく・・」
白馬は、オレの首に腕を回すと、顔を寄せてきた。
「ん・・・」
口唇を重ねあわされ、わずかに開いた隙間から舌を入れてくる。
なんだよ、止めろ、やめろ、ヤメロ!!!
オレは白馬を突き飛ばした。
床に白馬が崩れ落ちる。突き飛ばした拍子に切れたのか、口の端から血を流していた。
 ペロ。
舌で血をなめて、白馬はその場に寝転ぶ。
くすくすと笑い出す。

・・・もう元には、戻らない。壊れた人形。
「白馬」
もう一度、名前を呼ぶ。
「・・・オレは、オマエが好きだよ。バカだよな、オレも」
今になって気付くなんて。
体を起こした白馬は、オレを見つめると、不思議そうに首を傾げた。
「どうした?」
しゃがんで目線を合わせると、オレの顔に触れる。
知らず伝っていた涙を拭った。
「涙が珍しいのか?」
自分の指についた涙を物珍しそうに見つめている。
「白馬」
初めて抱きしめた白馬の体は、意外と柔らかだった。
「オレが、オマエを開放してやるよ」
オレの手で。
キラリと、ナイフをかざす。コレを突き刺せば終わりだ。この世界から、オマエを自由にするよ。
「・・・くろば」
こと切れる前に呼んだのは、オレの名だった。
血の付いたナイフを持ったまま、冷たくなっていく体にキスをした。
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