過去・拍手・その1

□ある雨の夜のお話
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コンビニに夜食用のポテチやらラーメンを買いに出たら、帰ろうとすると雨が降っていた。
あーツイてない。
1本500円のビニール傘を買って、表に出る。例え500円とはいえ、学生の身には痛い出費だ。ファーストフードじゃ、結構食える。こんな考えは庶民的というか、貧乏臭いというか。
鼻持ちならないアイツなら、こんなこと思いもよらないんだろうなーと考えていたら、シャッターの降りた花屋の軒下にソイツがいた。
濡れた髪から、雫が垂れていて。
なぜだか。

泣 い て る 気 が し た

シカトして通るのもどうかと思うし、しかし、声をかけるのもどうかと思っていたら、ヤツの方が先に気が付いた。
「黒羽くん」
「よお。どうしたシケたツラして」
言ってから、しまったと思う。余計なことだ。
「振られでもしたか?それとも犯人を取り逃がしたとか?」
そう言うと(これも余計なことだ)、白馬はクスッと笑う。
「当たりだ」
え?
どっちが?
「「……」」
2人して無言になって、雨音だけがある。
「…あー、あのさ。アレだ。ばあやさんでも待ってんの?」
「…いいえ。待ってるのは、雨が止むのをです」
白馬は空を仰いだ。空は真っ黒だ。
「へえ」
「今日は、一人で帰るつもりだったので」
「…オレんち寄ってけよ」
そんなこと言うつもりはなかったのに、勝手に言葉が口をついて出た。
「え」
「ほら!風邪ひいたらなんだし」
今度は、思い付いたことを言った。
「でも」
「なんなら泊まってってもいいし」
お袋は知り合いの結婚式に泊まりがけで行っている。
「ヘコんでんなら、ぱーっと酒でも飲んでウサ晴らせよ」
「…未成年が飲酒ですか?警視総監の息子が?」
そう言いながらも白馬は楽しそうに笑った。
「入ってけば?傘。ま、男同士で相合い傘なんて、ゾッとしないでもねーけど」
「…確かに」
クスリと笑って白馬が言った。
「来る?」
「行きます」
傘をずらして場所を空けると、白馬はオレに近付いた。
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