はなし

□ガンパレード
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第一章 面倒なのは苦手です 




 早朝、日が昇るか昇らないかのうちに俺は部屋を出た。
 部屋を出るって事は当然ドアからなのだが、最近はもっぱら窓から出ている。それには深い訳があるのだが、そこは後々語ろう。
 腰にはずっしりとくる感覚があり、そこに手を伸ばすとホルスターと慣れ親しんだ銃のグリップがある。
 俺こと、水無月空(みなづきそら)はエリア13に1校しかない銃の専門学校の学生である。俺達の通う学校は『ガンズアカデミーエリア13校』って名前で、ほんとそのまんまで、違うエリアの学校はエリアの番号が違うだけで、なんともまあ、わかりやすいんだけどね。
 エリアごとに銃の学校は1校のみという規定があり、そこに集められるのはエリアの中から選りすぐられたエリートばかりだ。
 ちなみに、俺がエリートかと言うとなんだか語弊があるかもしれない。俺の校内ランキングは下から数えたほうが早いし、あまりほめられた成績を残しているわけでもない。
 とと、こんなところで油売っているとあいつに見つかりかねない。
 あいつって言うのは

「毎朝ご苦労ね。そんなにまでして私から逃げたいのかしら?」

 …こいつだ。
 こいつこと、如月花怜(きさらぎかれん)は、俺の幼馴染で校内ランキングも2位と、エリートって言葉はこいつのためにあるような言葉だ。
 そして、俺は花怜とパートナー契約を結んでいる。
 パートナー契約ってのは、チームを組む事で、たいていは上位ランカー同士や、狙撃手と前衛、後は仲のいい同士や、息の合う者同士といった感じで契約は結ばれている。そして、一回結ばれた契約はそう簡単には破棄することができない。っといったわけで、俺達は腐れ縁を続けてるわけだ。ちなみに、チーム同士のランキング戦もあり、どちらかというとチーム戦がメインになっている。そのチームランキングの上位5チームまでが『ガンパレード』に出場できるのだ。
 ちなみに、俺達のチームの成績は5位。ぎりぎり代表に選ばれているという状態だ。
 まあ、ランキング下位の俺と組んで5位に残る花怜のスキルがあってのことだが。俺は代表になんてなりたくなかったって言うのが本音だ。あまり期待されるのは苦手だし、面倒なのは苦手なのだ。だって俺ランキング下位だし。

「おはようございます花怜様、今日もご機嫌麗しく…」
「良いから、早くそこから降りてきたらどうなの?」

 冷や汗を流しながら、俺はご機嫌取りの言葉を口にするが、花怜の機嫌は良くないらしく、明らかに不機嫌そうな顔で俺をにらみつける。
 ちなみに、俺は今部屋の窓から出た状態。二階の第二学生寮(男子寮)窓の外の小さなスペースの上で、猫のようななんともみっともない格好でいた。

「そうします」

 半ば半泣きで、そこから飛び降りる。途中にある一回の俺がさっきまでいたスペースと同じようなところに手をかけ勢いを殺して着地する。

「空、毎日毎日そうやって逃げられるとでも思った?」

 着地した先には憤怒の表情の花怜。

「い、いやその…あのですね…」

 何かしらのうまい言い訳って奴を模索するがまったくいい物が出てこない。

「言い訳は良いから、早く朝練にいくよ」

 そのまま腕をつかまれ連行される。今日もまた面倒な一日が始まりそうだった。
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