はなし
□海の見える景色
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「じゃ、私とデートしよ!」
「は!?」
突然すぎるだろ。
「なによ。私とデートがいやだっていうの?」
「い、いや、そうじゃございません。少し突然だったもので。」
「仕方ないでしょ、もっと早く知ってたら何かできたと思うけど、今日知ったんだから何も準備できないじゃない。だから、思い出つくり。」
そういって祐は最高の笑顔を俺にくれた。
その後は、祐が俺の腕を取って進んでいったのだった。
しかし、デートといってもこの町じゃすることは限られている。
レジャー施設は無いし、見て回るようなものは無い。
この町には小さなスーパーと魚を売る市場と漁港、そんなものしかないのだ。
俺と祐は適当に町を巡ったあと近所の公園に来た。
「ここ懐かしいね。昔はよくここで遊んだよね。」
そういって、祐はつついてブランコを揺らす。
「あ〜そうだな。小学校のころとか日が暮れるまで遊んでたよな。」
俺はそういって、ブランコに腰掛ける。少し小さくて腰にチェーンが食い込んだ。
「そうそう、よく隆弘は泣いてたよね〜」
そういって祐はとなりのブランコにすわった。
「な、ほとんどお前が原因じゃねえか!」
「あれ?そうだっけ?」
「そうだよ!大体お前が変なことすることの尻拭いばかりさすからだなぁ。」
「はいはい、ごめんね〜」
こいつは、反省してねぇ。
「ねぇ隆弘?」
急にしんみりした声を出す。
「なんだよ?」
「何で東京行こうって決めたの?」
やっぱりきたか。いつかは聞いてくると思っていたから、あんまりあせったりしなかった。
「東京ってやっぱりあこがれるだろ?何かあるってさ、漠然としたものだけどさ。」
その問いに俺は用意していた答えを言う。
本当のことは言いたくなかった。
「うそ。」
「え?」
「隆弘は昔からうそつくのへただよね。嘘言うとき、わざと視線ずらして目合わさないようにしてさ、視点があってないんだよね。ばればれだよ。」
「ぐっ。」
そういや、祐にうそがばれなかったことが無かった。
「まあ、今日は許してあげる。私はその答えを信じてあげる。」
「え?」
「今日は特別だからね。今日は特別。」
そういってブランコから立ち上がる。
そして、俺の前に立つ。
「こんなときに言うのは反則かなって思ってたんだけどね。あんたも今日は特別なんだから勘弁しなさいよ。」
「なんだよ?」
なにか、猛烈にいやな予感、いや変な予感がした。
「私はね、ずっとあんたの、隆弘のことが好きでした。」
「えぇ!」
「なによ!今日は特別なんだから付き合ってよね!今日って言っても後少しだけどね。今から恋人なんだからね!」
なんという急展開。
「ちょ、急すぎるって。そんなこと言っても…」
「うるさいって、今日は特別なの!いいでしょ!」
その強い口調に俺はうなずくしかなかった。
「それでいいのよ。じゃ、恋人と言ったらあれよね?」
「あれって?」
「もうにぶいなぁ〜いいから目つぶって。」
そういわれて目をつぶる。
少しして、顔になにか近づいてくる感覚が。
そしたら、唇になにかやわらかい感触があった。
これって、キキキキキキス?
少し目を開くと真っ赤な祐の顔がドアップであった。
少し、多分十秒ぐらいだけど、そうしてくっついていた。
「ん。こんな感じかな?」
「ななななななにすんだよ!?」
「恋人なんだからキスぐらい常識でしょ?感謝しなさいよ私のファーストキスなんだからね。」
そういう祐の顔は真っ赤だ。いや、多分俺の顔も負けずに真っ赤だろうけど。
「いや、そういうんじゃないんだけど…」
「もお!男がぐちぐち言わないの醜いわよ?」
そういわれると何もいえなくなるのが俺だった。
それから、少しきまずい空気が少し流れたけど、公園から見える海をみて、夕日が沈んでいくのをみて、自然と手をつないでいた。
その後、祐は俺の家に遊びに来た。もう、なかなかくることも無いだろうからってそう言って。
だからといって俺の部屋で特にすることも無くて、ただ、ボーっとしていた。
祐は少しもじもじとしていて、俺が動くたびにピクって反応していた。
そして、少しして残念そうな顔をするのだった。
「なぁ?」
ビク!っと祐が反応する。
「な、なに?」
すごく、期待してるような、恥ずかしそうなそんな顔をむけてくる。
「い、いやな。飯ぐらい食べるかなって思ったけど、母さん父さんの手伝いで遅くなるって連絡あったから、何も無いしよ、もう帰ったほうがよくないか?」
とたんすごく残念そうな、そんな顔をしてうつむいた。
さっきからの祐の百面相を見てるってのも変な気分だ。
「なぁ?どうしたんだよ?」
おかしい祐の行動に気になって聞いてしまった。
「ほんとに鈍感だよね。もう。」
「なんだよ?」
「いいから、こっち座ってよ。」
そう言って、自分の隣をたたく。
その催促におとなしく従う。
「ほらよ、これでいいか?」
「うん。」
そう言って祐は手を握ってくる。ぎゅっと、少しだけ力強く。それに答えるように俺も握り返す。
「ねえ隆弘?」
呼ばれて顔を向ける。
「さっきはさ、無理やり恋人とか言っちゃって無理やりなかんじだったけどさ、隆弘の気持ち聞いてないよね。告白したけどその返事もらってないんだ。お願い、返事もらえないかな?」
そういって、俺の肩に頭を傾けて体重をかける。
俺はその答えを持っていた。
去り行く俺には残酷で、そして、祐にも酷なそんな答えを。
多分、ここで祐には友達で幼馴染といえば、そういえば悩まないだろう。
だけど、だけど。
「ちなみにうそはだめだよ。うそついても私にはわかるんだから。お願い…ね?」
そう言って握った手をぎゅってまた握ってくる。
その手を俺は握り返して
「降参だよ。俺もさ、結構前から祐のことを友達じゃなくて女としてみてた。だからさ、東京行きのことも祐にはいいにくくてさ。絶対別れがつらくなるって思って、だったら、いわないで勝手にいなくなろうって思ってた。」
本心だった。だから祐には言えなかったんだ。
「ありがと、ほんとのこと聞けてうれしいな。」
そう言いながら、目には涙がたまっていた。
「あれ?うれしいのに、何で涙なんてでてくるのかな?はは、とまんないや…」
そう言って、涙をぬぐう祐。
思わず抱きしめていた。
「た、隆弘?」
「いいんだよ。うれしい時だって無くもんだよ。」
「うん。」
そう言ってしばらく俺の胸でないていた。
その後、自然とベットで抱き合って、そして、そのまま、ひとつになった。
その後俺の両親が帰ってきて飯を食べたけど、祐と俺は真っ赤で父さんと母さんは不思議そうにしていた。