捧げ物・頂き物(本)
□言の葉の綴り物
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文とは―――
自分の思いを書き記したもの…
文とは―――
相手に思いを伝えるもの…
文とは―――
言葉にできないものを書くもの…
「はいっ今日もよろしくね、小天狗ちゃんっ」
あかねは小天狗に文箱を託す。
「いつもの所でよいのだな?」
「うん、よろしくねっ」
文箱を持って、土御門を後にする小天狗。
それをあかねは、見えなくなるまで見送っていた。
「…季史さん、読んでくれるといいな」
私の大切な人…――私を龍神の神子ではなく、元宮あかねとして見てくれた、唯一の人――…多季史さん…――
彼に文を送るの為に一生懸命、字を藤姫ちゃんに教えてもらったり。
彼の好きそうな紙を選んだり、添える花を選んだり…
こんなにも手紙を送ることが楽しいもので、幸せになるものだとは思ってもいなかった―――
初めて彼にあったのは…
雨の多い、梅雨時―――
外出時に雨に降られてしまい、走って屋敷に帰ろうとしていると…
向かって走ってきた彼の薄衣の袖と、私の袖が触れてしまった―――
「あ、」
ごめんなさい