甘い水

□拍手達
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香水





キラが遠征に出て行ってから2日が経った。


そんな事だからいつもの訓練に励む兵の声や、それらを世話する女達の笑い声も、主不在のこの城ではすっかり成りを潜めていた。




「留守番なんか他の奴に頼めばいいのに」



ぽつり、と洩らすのはこの城の者達から愛されて止まないユキ。


主不在のその部屋で、彼は一人暇を弄んでいた。



「何で置いてくんだよ…」



彼が城を出る時は大抵自分にも声が掛かるのに、今回に限って共に行く事を断られた。

しかも仲が良いルックやシーナも共に行ってしまった為に尚更、寂しかった。



「……帰ろうかな」



ぼすっ、と軽い音立てて寝台に身を沈めると、微かに柑橘類の香りが漂う。

それはユキを置いていった張本人のものだ。
それなのに、どうして。



「うぅ〜っ」



先程まで置いていかれた寂しさに文句を垂れていたのに、その残り香にキラの存在を見つけてしまい不覚にも心が落ち着いてしまった。

それが自分が女々しく思えて、悔しくて、ユキは唸った。



「…っ早く帰って来なよ」



それでも。認めるしかなかった。
今、君を感じて心が安らぐのは事実なのだから。




例え女々しくても、悔しくても、僕は君の中で、帰りを待つよ。





だから、ねぇ………









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