甘い水

□拍手達
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あれは何年前だろうか…?


「グレミオ、手」


恥ずかしそうに顔を反らして、しかし確かに差し出された小さな手を自分はしっかりと包み込んだのだ。



ああそうだ、夕食の買い出しに行った帰りの事だった。
昔は良く繋いだものだが、成長するにつれてそれをしなくなってしまった。

それでも時たま、照れながらも自ら差し出してくれる小さなそれを私は喜んで受け入れて帰路に着くのだ。

その度に……掌に伝わる尊い熱を守るのだ、と胸に秘めて。





「グレミオ!開けてっ」


背中越しに伝わる振動。
泣きながら必死に戻れ、と叫ぶ声を無視して目を閉じる。

振動の発信元に手を添えて。
あんなに小さかった手はいろんな物を背負い、そして捨ててきたのだという事を実感する。


「坊っちゃんは、もう大丈夫です……」


あの小さな手は最早、自分が引いた守られるだけのものではない。

自分が引かなくとも、もう大丈夫なのだ。



小さな主が成長した喜びと、彼に新たな重荷を背負わせる事に罪悪感を感じながら。

守り人の熱は消えていった―――……。
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