甘い水
□拍手達
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取り残された、
少年はゆるりと真白い瞼を開いた。
その双眸に映るは色鮮やかな世界。
花が可憐に笑い、草木は天に向かっていっぱいに背を伸ばし、空は泣いたり笑ったりと表情を変え、やがて全てをリセットするかの如く真っ白に染め上げる。
そんな世界を少年は見てきた。
夜が早く来ることもあれば、未だ夕刻かと思うことがある。
こんなことを毎日繰り返し、繰り返し。
そんな世界で彼は生きていた。
それでも、それらは変わらず存在し、歩くような速さで、時に駆け抜けるように、決して戻る事はなく進んでいく。
少年は緩やかに笑った。
時は流れるというのに変わることのないもの。
まるで自分のようだと。
ただ静かに、笑った。