甘い水

□約束
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赤月帝国が首都、グレッグミンスター。
【黄金の都】と称されるその街は、この日、真っ白に染め上げられていた。

今年初めての積雪、しかも希にみる雪量とあって子供たちは我先にと家を飛び出しては雪遊びに没頭し、大人達は家や路の雪掻きで大忙しで、この街はいつもとは違う表情を覗かせていたのだった。




「くらえっ!」


「おま、やったな!」


そんな街の一角、テオ・マクドールの屋敷からも子供達の楽しげな声が響いていた。

手のひらサイズに握られた小さな雪玉が飛び交かっているのは、屋敷の裏手にある庭でのことだ。
雪玉が飛び出すと同時に掛け声が上がり、その後に軽い衝突音がしたかと思えば次いで、からかうような笑い声が起こる。
子供特有の無垢で、そして無邪気さが滲み出たものだった。

それはこの屋敷の主、テオの息子であるユキと親友テッドのもので、彼らもまた例外ではなく雪遊びに興じ、庭を駆け回っていた。



「これでどーだっ!」



威勢よく、声を張り上げたのはユキ。

雪遊びを始めた頃と何ら変わらない青の衣を目掛けて、彼は白い玉を力強く投げつけた。
因みにユキの頭髪及び衣類は至るところに白い斑模様が出来ており、どちらが優勢なのかは、言うまでもないだろう。


雪まみれになったユキが一投した雪玉は背を向けて逃げていたテッドの後頭部に当たりそうになるが、直前で察知したのか見事なまでに上手く避けられ、雪玉は慣性の法則よろしくテッドの顔の側を通り抜けて、地面に還ってしまった。



「はは、そんなの避けられる…っ」


「ふふ。油断した、ねっ」



テッドといえば余裕!とばかりににやつきながら振り返るが、そこを狙ったユキは隠し持っていたもう一玉をすかさず全力で投げつけた。




にやついた、親友の顔面めがけて。



僅か数秒後。
テッドが短く、くぐもった悲鳴を上げるのと同時に、にやついた顔面は見事な程に白に覆われたのだった。
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