甘い水

□睡葬
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「今年も奇麗に咲きましたね」


「そうだね」



満開の桃色の花弁を付けた一本の大木。
その根元に二つの影が寄り添っていた。



黒髪黒目の、見た所、十四〜十五歳の少年が、そのがっしりとした幹に背をゆったりと預け、己の下肢へと微笑みを向けている。

その視線の先には、白髪の男性が少年の柔らかな太股を枕に寝転がっていた。


彼は檸檬色の瞳を細め、遥か上空に広がる桃色を見上げた。

まるで子供を慈しむかのように。



「ああ、この樹ももう七十歳ですか」


「ふふ、そうだね。君が王として生きた年と同じだからね」



眦を下げて穏やかに笑う男性の面には、彼のこれまでの時間が刻まれている。
八十年余りを過ごしてきた、生きた証だ。
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