甘い水
□融解
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雨は嫌いだ。
洗い流すかのように、僕から「何か」を奪っていく。
あれから……あの大きな戦から3つの季節が過ぎた。
新しい国の夜明けと共に、僕は家族であり従者でもあるグレミオを連れて各地を放浪していた。
現在はトラン共和国へと続じる森があるバナーの村に暫く身を置いている。
ここバナーは川沿いにある小さな漁村で、西にある船着き場以外は、コを描くようにして三方を深い緑に囲まれ、また、大きな交通路も持たないこの村は、外から訪れてくる者が少ない。
しかしそれ故の閉鎖的な雰囲気もなく、この村の人々は僕達の事を知っていてなお、ただただ暖かく迎えてくれた。
ここに着いて以来、僕もグレミオもあまりに居心地が良くて、今はこの村唯一の小さな宿屋でお世話になっている。