<短編/番外編>
□拍手御礼短編集
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【縛】
知ってたら・・・お気に入りのワンピ、着てきたのに・・・
飲み会に誘ってくれたサトコから、後で聞いた話には、
私は目を見開いたまま、数秒間固まったそうだ。
・・・私は半年前、彼にふられた。
「と な り に す わ り な」
私の心を知るサトコが、口パクで私に言う。
ケンイチくんの隣に座ろうとした。
別れた時の髪型ではなかった。
・・・みるめだ。
最近撮っているだろう、映画の主人公だ。
「あの・・・あの、ここいいですか?」
しかし、彼の口から出てきたのは・・・
「だめです」
・・・え
私は立ったまま、
そしてケンイチくんは私を見上げたまま、沈黙した。
「まあ、まあ、いいでしょ?松山くん」
サトコが代わりに言ってくれる。
ケンイチくんが、しぶしぶ、と言った感じで頷く。
「久しぶりだね」
気を取り直して、話しかける。
「・・・・・そうでもないと思うけど」
「・・・そっか」
「・・・・・」
「あの・・・ね、ね、松山くん」
ケンイチくんって呼んでたけど・・・
「・・・なに?」
「いま、撮ってる映画・・・公開されるのすごく楽しみにしてるよっ」
精一杯可愛く言ったつもりだ。
「・・・・・」
なのに・・・ケンイチくんは、黙ったまま。
誰かに時折話しかけられて、それに答えるだけ。
ぎこちない空気が流れて・・・
二人とも黙ったままで・・・
私は泣きたくなってきた・・・
もう・・・帰りたい・・・
涙が出そうになったその瞬間、
ケンイチくんは、私の腕をガッと掴んで、
何も言わずに立ち上がった。
「帰るから」
みんなは、そんなケンイチくんに唖然としている。
「え?や、ちょ・・」
居酒屋の廊下を、私を掴んでどんどん歩く。
ケンイチくんは、その一番奥にある重そうなドアを開けると、非常階段に出た。
そして、私の両肩を掴んで、非常階段の壁に
どん!
と、押し当てた。
そして何も言わず、
キス
した・・・・・・
それは激しいキスで、
すぐに私の肺から、酸素が足りなくなった。
・・・苦しい。
やっと唇を離したと思うと、
耳元で、
「楽しみにしてるとか言ってんじゃねーよ」
と、つぶやいた。
ぞくり・・・
としてしまう。
だめだ・・・
私、逃げられないよ・・・
私は・・・ずっと・・・
あなたに心を縛られるのを待ってた・・・
あとがき
Sケン・・・イメージは、10代の頃のケンイチさん。
完全なる飼育みたい・・(?)