詩創
□絡まる狂気。
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俺たちはあの頃、非力だった。
あの時は僕は君が全てで、君は僕が全てで、そんな狭い世界に僕たちは生きていた。
それが、幸せだと思ったんだ。
『絡まる狂気』
ある雪の降る夜、僕はフラッと公園に行った。
家では祖父が酒を飲んでいる。
隣の部屋にいた僕は怒鳴るような声を聞いた後、逃げるようにして裏口から家を出た。
祖父は酒癖が悪い。
酒を飲むと優しかった面影は一欠けらも無くなり、鬼と化し、家で暴れる。
それは大抵物を破壊し、最後に僕に向けられる。
昔はお酒なんてたまにしか飲まない人で、お酒には強い人だった。
こんな酔い方をするようになったのは、僕と一緒に住むようになってからだった。
「さむ・・・・・・」
雪が止め処なく僕の肩へと落ちていく。
ベンチを見つけて積もっている雪を軽く払い腰を下ろす。
急いで家を出てきてしまった為、コートも何も防寒着を着ていない。
手が痺れるような感覚を感じて、手に白い息を吹きかける。
幼い頃の思い出が蘇る。
最初に思い出したのは、白い花のような雪だった。
シンシンと振り続ける雪が電灯に照らされて、綺麗だなと思っていた。
そして暖かい手。
長い長い暗くて寒い道を僕はシンジと歩いていた。
手をぎゅっと繋いで、不安そうな顔をしているとシンジは強張った顔で
必死に笑顔を作ろうとしていて、それを見ていると少しだけ安心した。
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