詩創
□天の、涙。
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「行かないで」
君は僕に縋りつくような瞳でそう言った。
それを冷たく、冷めた目で僕は見ていた。まるで、他人事のように。
「さよなら」
低い声でそう呟き背を向け歩き出すと、
何ともいえない泣き声が僕の後ろ髪を引いた。
振り向くな、と何度も何度も呪文のように心の中で唱え、
重い足を無理矢理動かす。
そして君が見えなくなったところで、僕は崩れた。
雨が、静かに僕の体を打ち付ける。
水溜りに写る僕の顔が、今までに無いほど情けない顔をしていた。
なんで、僕が捨てたのに、その僕が泣かなきゃならないのだろう。
ずっと好きだった。愛していた。
あんなに愛していたのに。
君が幸せになる為には、こうするしかなかった。
僕を忘れさせる為には、こうするしかなかった。
君には、明るい未来が待ってるから。
こんなに苦しいことになるなら、
最初から君と出会わなかったら良かったのに。
君が僕に優しくするから。死んだ魚のような僕を。
君の言葉に、何度も救われたよ。
一緒に逃げよう。本当はそう言いたかった。
でもね、父さんと逃げてこの地で君と会ったんだ。
結局は逃げても無駄だって気付いただろう。
ごめんね。本当に好きだった。
愛したのは君が初めてで最後だよ。
君は純粋だから。僕を忘れて、
僕の知らない未来を、僕の分まで生きてね。
僕は明日、父さんと一緒に、旅立ちます。未来の無い、旅へと。
>>アトノマツリ
不完全燃焼。
(2006/7/16)
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